運命

シバ達は塔の中へと案内された。

上を見上げると、螺旋状の階段が続いていた。

「随分と長い階段だな。」

パーンが思わず口にする。

シバ達は果てしないとも思える階段をどんどん登って行った。

ようやく最上階に辿り着くと、魔術師のレックナートが待ち構えていた。

「お待ちしておりました、帝国からの使者の方。」

そしてシバに目をやったレックナートは、微笑みながらこう続けた。

「あら、今年はかわいい使者ですのね。」

それを聞いたテッドがシバに話し掛ける。

「かわいいだってさ、どんな気分だい、シバ?悪い気はしないか?」

シバは多少なりともショックを受けたのか、それともレックナートの微笑みに当てられたのか、無言であった。

レックナートはその様子を見て悪いと思ったのか、先程の言葉を訂正した。

「あなたも立派な帝国軍人でるもの、かわいいだなんて、失礼でしたね。”星見の結果”は用意してあります。こちらへどうぞ。」

レックナートは奥の通路へと入って行った。

「坊っちゃん、レックナート様の所へ・・・・。」

グレミオが促す。

「これで、星見の結果をもらえば一安心ですね。」

思ったよりも優しげな様子のレックナートに安心したのか、クレオが言った。

テッドもシバの背中を押しながら言う。

「シバ、レックナート様ってキレイだな。早く行って来いよ。」

パーンも落ち着きなく辺りを見回しながらシバに催促する。

「坊っちゃん、早いとこ”星見の結果”をもらって帰りましょうよ。腹が減ってきて・・・。」

シバはレックナートの入って行った通路へと歩みを進めた。

奥はシバがこれまでに見たこともないような神秘的な部屋であった。

美しいステンドグラスで装飾され、台座には水晶玉が置かれている。

レックナートは神秘的な部屋に相応しく、落ち着いた声でシバに語りかけた。

「帝国のお使者の方。ここに”星見の結果”があります。どうぞ、お持ち帰り下さい。」

シバが進み出ると、レックナートは何かに驚いたように僅かに目を見開いた。

「・・・・!あなた、お名前は?」

「シバ・マクドールと申します。」

シバは僅かに変化したレックナートを不思議に思いながらも、しっかりとした口調で答えた。

「そう、シバ・・・・。優しい名前ね。私は星見の魔術師。星の流れを見て、そこに未来を読み取るのが仕事。しかし、未来とは定められたものではありません。私に分かるのは、その大きな流れだけ・・・・・。」

そして一旦言葉を止めると、シバを優しい眼差しで見つめた。

「シバ、あなたは世界の大きな流れの中で、厳しい宿命を背負わされています。それは、辛い選択であったり、癒されることのない悲しみかもしれません。そして、その結果は私にも知ることはできません。ただ、ひとつだけ・・。あなたの運命は常にあなたの手中にあります。忘れないで下さい。あなたが正しいと思える事を、選び取るのです。分かりましたね?」

「はい。」

慎重に耳を傾けていたシバにもその言葉の持つ意味をまだ自覚することはできなかったが、レックナートの威厳に圧倒され、頷いていた。

「”星見の結果”を渡します。これで、私の仕事は終わりです。しかし、あなたとは再び巡り会うことになるでしょう。これは”星見”ではなく、私の願いですけどね。」

何やら意味深そうな言葉と共に、レックナートはシバに”星見の結果”を手渡した。

「どうも有難うございます。」

レックナートの元を去ろうとしたシバの背後から、レックナートは念を押すように先程と同じ言葉を投げかけた。

「自分の選択を信じるのです。今はそれ以上は言えません。」

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