テッドの災難

その頃、退屈しきったフッチが相棒のブラックに向かってグチをこぼしていた。

「遅いなぁーー。おいブラック、先に帰っちまうか?なーに、大丈夫。近衛隊の方々なら何とかするだろう。」

その途端、目の前に白い光が広がったかと思うと、シバ達一行が現れた。

「ん?うわっ、どういうことだこりゃ。もう、元の所に着いてるぜ。こんな魔法初めて見たぞ。」

パーンはあんぐりと口を開いている。

「さすがにレックナート様の弟子ですね。」

グレミオが感心したように同意した。

「それはいいけど、テッド君の姿が見えないようだが・・・。」

クレオが辺りを見回すと、光と共にテッドが姿を現した。

しかし思い切り地面に叩きつけられ、尻餅をついてしまった。

「いててて、ちきしょう!やりやがったな!どうしてこう、こまっしゃくれたガキばかりなんだ?」

文句を言うテッドに対して、フッチが敏感に反応した。

「何だって、そりゃどういう意味だ!」

グレミオが慌てて2人の間に割って入る。

「もういい加減にして下さい。ケンカはうんざりですよ。」

シバはフッチに近付くと言った。

「待たせてしまってすみません。もう一度グレッグミンスターまで送り届けて頂けますか?」

シバの丁寧な口調に機嫌を直したのか、フッチは途端に笑顔になった。

「ようし、やっと乗れるのか。さあさあ、乗ってくれ。ぼやぼやしてると置いてくぜ。」

その言葉に、全員慌ててブラックに騎乗した。

「み、みんな乗りましたよ。」

グレミオは怖いのか、多少声が震えている。

「くっそ、せめぇなあ。」

パーンが顔をしかめたが、フッチは構わずにブラックに向かって声を掛けた。

「ようし、行くぞブラック、帝都までひとっ飛びだ!」

ブラックは大きく羽ばたくと力強く吠えた。

「うおーん。」

ブラックは再びぐいぐいと大空を進んで行った。

やがてグレッグミンスターが眼下に見えてきた。

「さあ、着いたぞ。ほらよ、俺の仕事はここまでさ。あんたらは、星見の結果を隊長に渡す仕事が残ってるんだろ。俺達は、せっかく都に来てるんだ。何か見物してから帰るかな。」

そう言ってフッチはブラックに手を掛けた。

「芝居でも見に行こうか、ブラック?」

「うおーん。」

ブラックがフッチの声に答えた。

シバ達がその様子を眺めていると、フッチが気が付いたように言った。

「ん?どうしたんだい?早いとこクレイズの所へ”星見の結果”を届けた方がいいぜ。」

「ありがとうございました。助かりました。」

シバが頭を下げた。

「いいって。これも仕事だからな。じゃあな。」

フッチと別れたシバ達は、紋章屋へ寄って行くことにした。

「いらっしゃいませ。ご用は何ですか?」

「封印球を宿したいのですが・・・。」

「誰に宿しますか?」

「私に頼むよ。」

「火の封印球で宜しいですね?」

「ああ。」

「紋章が宿りました。ありがとうございました。」

「これで私にも炎の魔法が使えるようになったはずだ。」

クレオが言った。

「良かったですね。これで戦いの時に楽になりますね。」

「じゃあ城へと向かおう。」

シバ達は早速城へと向かった。

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