虎の威を借るカナン
クレイズの元へ行こうとすると、クレイズの部下のカナンがシバ達を出迎えた。 「へっへっへっ、遅かったじゃないか。クレイズ様に怒られるぞーーー。」 クレイズは本当に機嫌が悪そうだった。 「ふん。やっと戻って来たか。俺を待ちくたびれさせるつもりか?早く星見の結果を渡せ。」 「お待たせして申し訳ありません。これが星見の結果です。」 シバが星見の結果を手渡すと、クレイズはわずかに機嫌を直したようであった。 「ふん。どうやら仕事はこなしてきたらしいな。全くの役立たずというわけでもないか。よし、すぐにも次の仕事にかかってもらう。ん?どうした。もう少し嬉しそうな顔をしたらどうだ。帝国のために働けるのだぞ。」 「そうだ、そうだぁ。クレイズ様の言う通りだ。」 カナンが言葉を続ける。 「ちっ。」 パーンは納得いかないようである。 それも当然だろう。 たった今任務を終えたばかりだというのに、休む間もなく次の命令を与えられたのだから。 「いいか、よく聞けよ。この帝都グレッグミンスターの東にロックランドという町がある。」 「いいか、分かったか。グレッグミンスターの東のロックランドだぞ。」 「この町が、どうしたことか今年は税金を納めに来ないのだ。」 「どうしたことか、来ないのだ。」 「そこで、お前達はロックランドに出向き、」 「そうとも、出向くんだ。」 「税金を納める日が・・・、」 「税金を納める日だぞ。」 ここでとうとう耐え切れなくなったクレイズが、カナンを振り返ると大きな声で怒鳴りつけた。 「うるさい!!貴様はさっきからごちゃごちゃと。少し静かにしてろ。」 「そうとも。お前ら静かにしろ。」 「馬鹿もん!!お前のことだ、カナン!!」 「ええ?俺のことですか?」 (今頃気付いたのかよ。ほんとに馬鹿だな。) パーンは心の中でカナンを笑った。 クレイズは再びシバの方へ向き直ると言った。 「ふん。まあいい。とにかく、ロックランドの軍政官に、税金のことを聞いてくるんだ。軍政官はグレィディという男だ。それから、今回はこのカナンがお目付役として付いて行く。」 「へへへ、お前らよく聞けよ。近衛隊じゃ、俺様の方が先輩だ。俺様の命令に逆らった奴は、帝国に逆らったことになるんだからな。覚えておけよ。」 「ゲスな奴め。」 クレオがクレイズとカナンには聞こえないように呟いた。 「よし、話は終わりだ。分かったら、さっさとロックランドへ向かうんだ!」 こうしてクレイズの命令により、カナンが無理矢理付いてくることになったのである。 |