ロックランドへ

「いいか?東に向かえば、ロックランドはすぐだ。軍政官の名前はグレィディだ。税金の納入が遅れているワケを聞いて来るんだ。忘れるなよ。」

クレイズに念を押され、シバ達はロックランドへと向かうことになった。

「よお、どうだった?簡単な仕事だったからうまいこといったんだろ?」

近衛兵達がからかい半分に声を掛けてきた。

「おやぁ、坊っちゃん?早いところクレイズ様の所へ行った方がいいですよぉっ。」

「失礼な!もうとっくに行ってきましたよ!」

グレミオが憤慨しながら言った。

「へっ、へんだっ!大将軍の息子だからって、い、威張るんじゃねえぞ。」

「坊っちゃんは常に謙虚です!」

「まあまあ、グレミオ。」

「坊っちゃんを恐れて強がっているだけなんだから、ほっておきなって!」

クレオとパーンが必死にグレミオをなだめる。

しかし全ての近衛兵がこのような態度をとっていたわけではない。

「テオ様を初め、五将軍の方々が次々とこの帝都を離れて・・・何やらキナ臭いですね。」

このように、心から帝都を心配している近衛兵もいた。

「もおお、聞くと見るとでは大違いだわ。近衛兵の奴らは威張ってばっかりだし。」

侍女達は仕事の手を休めて世間話に花を咲かせていた。

「皇帝陛下はウィンディ様を随分と、気に入ってるようね。羨ましいことだわ。」

シバ達が中庭に出て行くと、1人の侍女がこそこそと耳打ちしてきた。

「ウィンディ様とレックナート様は姉妹なのに、どうして一緒に暮らさないのかしら?もしかして、仲が悪いんじゃ・・・・・・。」

シバ達もその点については不思議に思っていた。

理由はかの姉妹のみぞ知ることであったが。

「何よ、あのクレイズとかいうオジン。人のことをイヤラシイ目で見て!それに副官のデブも気に入らないわ。」

家畜小屋の前にいる女性は、不満をあらわにした顔でまくしたてた。

「しっ、それは今は言わない方が・・・。」

グレミオが後ろを振り返りながら小声で言った。

幸いカナンはかなり遅れて付いて来ていたので、彼女の声は聞こえていなかったようである。

「何?あのデブが付いて来てるの?それは災難ね。」

彼女はよっぽど彼らが気に入らないようである。

中庭には近衛兵も見られた。

「テオ将軍は本当は反乱軍退治に行くらしいぜ。解放軍なんて名乗っているが、奴らはただの反逆者さ。そのうち、この俺がのしてやるさ。はははははははは。」

その噂が本当かどうかは分からなかったが、もし本当に反乱軍退治に行っているとしたら戻るのはかなり先のことになるのではないだろうか。

シバは少し心配になったが、そんな不安はおくびにも出さなかった。

「シバ様、どうですか?近衛隊の仕事にはもう慣れましたか?」

1人の近衛兵が声を掛けてきた。

「はい、少しずつですが・・・。まだ新米ですが、できるだけ足を引っ張らないように頑張りますので宜しくお願いします。」

「そっ、そんな!シバ様にそんな頭を下げて頂くなんて!」

近衛兵はすっかり恐れ入った様子であった。

「いえ、まだ私は入隊したばかりですから。」

「は、はあ・・・。」

近衛兵の前を去ってから、グレミオは1人ご機嫌であった。

(やっぱり坊っちゃんはよくできたお方だ。このグレミオ、生涯坊っちゃんのために命を捧げます。)

「何だ、グレミオの奴。何をにやけてやがるんだ?」

パーンは首をかしげていた。

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