ロックランドにて

ロックランドへ到着すると、シバ達は宿屋で一息入れることにした。

老人が酒を飲みながらくつろいでいる。

「酒をうまくするのはいい景色と、ほど良いつまみ。酒をまずくするのは、無粋な帝国軍の靴音だな。」

どうやら帝国に対して良い印象を持っていない様子である。

「親父、酒を頼む。」

早速カナンが酒を注文すると、酒場の店員は悪びれもせずに言った。

「すみませんねぇ、酒は品切れなんです。」

「じゃあ、そこに並んでいるのは何だ!!」

「ははは、ここの並んでいるのは帝国のお偉いさんに出せるようなもんじゃないですよ。」

「くっそ!馬鹿にしていやがる。」

カナンは不機嫌そうに床を踏み鳴らした。

「もうこんな時間ですから、今晩はこちらに泊まることにしませんか?」

グレミオの提案で、一行は宿で1泊することにした。

「ようこそ、ロックランドへ。藁葺きのふかふかベッドと温かい朝食付きで、一人30ポッチだよ。」

「では、5人お願いします。」

「5名だと部屋が2つに分かれてしまうがいいかい?」

「ええ、構いませんよ。」

「どうも。部屋はこっちだよ。」

部屋には主人の言う通り、ふかふかのベッドが用意されていた。

次の日の朝、用意された朝食を済ますと泊まり客がカナンを見て言った。

「わあ、すごいなぁ。その制服は帝国の近衛兵の物だろう?すごいなぁ、いいなぁ、いいなぁ。」

「はっはっはっはっは、そうだろ、そうだろ。」

カナンは豪快に笑った。

「いいなぁ、いいなぁ。いいモン食ってるからそんなに太れるんだろう?」

「何っ?」

泊まり客の論点は制服ではなく、食べ物のことだったようだ。

「ったく、ここは腹の立つやつばかりいやがる。」

「そ、それよりも先を急ぎましょう。」

グレミオが何とかごまかそうと、カナンに声を掛けた。

「うむ。」

宿の外へ出ると何やら元気な声が聞こえてきた。

「何だろう?」

シバが声に惹かれて近付いて行くと、声の本人がシバに向かって言った。

「よお、どうだい兄さん、一勝負してかないかい?」

「え?勝負?」

「さあさあ、いくら賭けるんだい?」

「坊っちゃん、駄目ですよ。これは賭博行為ですよ。」

グレミオがこそこそとシバに耳打ちした。

「ええと、やめておきます。」

「なんだ、残念。また来なよ。」

男は残念そうに言った。

「おっ、あんたもマルコに声を掛けられたのか?」

シバは別の男性にまた声を掛けられた。

「マルコ?」

「そこの男のことさ。あいつはああやって賭けを持ちかけては儲けているのさ。」

「そうなんですか。」

「でもよぉ、別にずるとかはしてないぜ。ちゃんと相手が買ったら金を払っているしな。」

「でも賭け事はいけないことですよ。さあ、行きましょう、坊っちゃん。」

グレミオはシバの手を引くと、その場を後にした。

「はあー、グレミオの奴真面目だよなあ。」

「何か言いましたか?パーン。」

「い、いやー。何もー。」

そんな2人のやり取りをよそに、シバは辺りをキョロキョロと見回していた。

「どうしました?」

クレオが声を掛けた。

「軍政官の家はどこだろう?」

「あそこの男性に聞いてみてはどうでしょう?」

「そうだね。」

「え?ああ、知ってるぜ。軍政官の家なら一番奥の建物さ。グレィディって言う狸野郎がその親分さ。」

男性は親切に教えてくれた。

「狸野郎?どういうことだろう?」

「きっと、一癖ある人物なんでしょうね。」

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