疑惑
ユーリとジョウイもベッドから飛び降りた。 「敵襲?????そんな、都市同盟との休戦協定は・・・・・。聞いたかい、ユーリ?とにかく、行ってみよう。」 「うん。」 ユーリがジョウイの後からテントの外に出ると、辺りは炎に包まれていた。 「ユーリ!ジョウイ!」 ラウドが呼ぶ声が聞こえた。 「どうしたんですか、ラウド隊長?」 ラウドがやって来ると、早速ジョウイが尋ねた。 「都市同盟の奴らの奇襲だ!!協定を破って攻めて来たんだ。汚い奴らめ!!!」 「そんな・・・。」 「ここは、囲まれているらしい。お前らは、東の森から山道を通って逃げるんだ!!早くしろ!!」 そう言い残して、ラウドは急いで立ち去って行った。 「逃げよう、ユーリ。ここで死ぬわけにはいかないからね。ナナミが一人ぼっちになってしまう・・・。」 「うん。でも、みんな無事だろうか?隣りのテントは?」 「ユーリ、待って!」 ジョウイが止めるのも構わず、ユーリは隣りのテントへ飛び込んだ。 「うわあー、逃げろーっ!」 少年2人がユーリとすれ違うようにして、慌てて飛び出して行った。 思わずほっとしかけたユーリであったが、ふとベッドを見るとまだ呑気に眠っている少年が視界に入った。 「ねえ、起きて!敵襲だよ!」 「ん・・・・・。て!!!敵!!!うわわわわわわわわわわわわわ!!!!!」 ようやく目を覚ました少年は、慌てて起き上がるとテントから逃げ出して行った。 「ユーリ!早くっ!」 ジョウイに呼ばれてユーリはテントから飛び出した。 「森へ逃げよう。」 2人が森へ向かおうとすると、目の前には悲惨な光景が広がっていた。 「おい!しっかりしろ!目を開けろよ!!!」 自らも傷を負っている少年兵が、目を閉じたままの少年を必死で揺さぶっていた。 「な、何で・・・こんな所に・・・に・・・逃げなきゃ・・・。」 そう呆然と呟く少年は座り込んだまま震えていた。 「ユーリ、急いでっ!」 「でも、ジョウイ。」 「もう火がこんな所まで回りこんでいる。急がないと、僕達も危ない!」 ジョウイに強引に手を引かれながら、ユーリは走った。 涙が溢れて止まらない。 (どうして・・・もうすぐ帰れるはずだったのに。みんな、楽しみにしていたのに・・・。) やがて山道に入った。 すると1人の少年兵が、もう1人の少年兵に肩を貸しながら歩こうとしているのに出会った。 「い・・・・痛いよ・・・・お母さん・・・・・・・・・。」 「大丈夫だよ・・・僕が助けてあげるよ・・・友達だろ。」 「手伝うよ。一緒に逃げよう!」 ユーリが思わず声を掛けると、少年は言った。 「大丈夫だよ、ユーリ。君達は早く逃げた方がいい。」 「でも・・・。」 「行くんだ、ユーリ!ジョウイ、ユーリを頼んだよ。」 「ああ。行こう、ユーリ。」 何度か後ろを振り返りながら先へ進んで行くと、ずっと先の方を少年兵達が逃げて行く姿が見えた。 その時何を思ったか、突然ジョウイが立ち止まった。 「待ってくれ、ユーリ・・・・。」 「どうしたんだい、ジョウイ?」 「おかしいと思わないかい、ユーリ?逃げるなら、必ずこの森を通らなくちゃいけない。敵もそれぐらい分かっているはず・・・・・。敵はこの森で待ち伏せしているのかもしれない。戻ろう、ユーリ。この事を、ラウド隊長に知らせないと・・・。」 「うん。急ごう、ジョウイ。」 2人は来た道を再び戻り始めた。 |