近衛前嗣の書翰
謙信公と親交があった関白近衛前嗣は、当時は下総古河におりましたが、謙信公に一書を寄せて戦勝を賀しました。
今度、信州に於て、晴信に対し、一戦を遂げられ、大利を得られ、八千余打捕られ候事、珍重大慶に候、珍しからざる儀に候へ共、自身、太刀打ちに及ばるる段比類なき次第、天下の名誉に候。仍而太刀一腰、馬一疋(黒毛)差越候(下略)
十月五日 前 花押
上杉殿
上の書状は少し大げさにすぎるところもありますが、この戦争が如何に名高く国中に響き渡ったか想像ができます。
昔から戦国時代に於ける上杉、武田の対立、殊に前に述べた一騎討の大激戦は史上甚だ有名であるばかりでなく、これに関する稗史小説の類は数え切れないほど沢山あります。