虜囚

朝歌城 謁見の間

「うっ。」

気がつくとそこは城内のようであった。

「姐己様、崑崙からのお客様をお連れしました。」

先程おかしな術を使い、太公望を捕らえた張本人である胡喜媚である。

すると側に控えていた少女が口を出した。

「何だ、道士ってのはこんなもんなのかい?だったら楽勝じゃん!」

その時少女をたしなめるように、きらびやかな衣装に身を包んだ女性が声を発した。

「これ、お客様に失礼ですことよ。」

「わらわは姐己、紂王陛下の妃です。お土産の宝貝は、有り難く頂いておきましたわ。」

「でもね・・・・・・わらわは坊やと遊んであげるほど暇ではございませんの。」

「で、こいつ、どうすんのさ?あたいは、銅の柱に縛りつけてぱあっと燃やしちまいたいなあ。」

先程の少女である。

「手間をかける必要はありません。毒蛇の穴に叩き込めばそれでケリがつきます。」

胡喜媚が冷静に言い放つ。

彼女らの意見を聞いた紂王が、何かに取りつかれたような様子で声を発した。

「まあ、待て。ここは、わしが自慢の槍を披露しようと思うぞ。」

「最近、生きた人間を突いていないからな。クックックック・・・・・・。」

「いやはや、いずれも結構なお考え。全くもって感心するばかりでございますなあ。」

重臣の費仲が取り入るように口を挟む。

「焼殺、毒蛇、槍の餌食・・・・・・。どれも捨て難いですわね。ああ、迷ってしまいますわ。」

「そうですわね・・・・・・。刑が決まるまで、地下牢に放り込んでおきましょうか。」

「もっと素敵な刑を思いつくかもしれませんし。ほーっほっほっほっほ・・・・・・。」

妃の姐己が、これほどの楽しみはないかのように嬉しそうに言う。

「そうか、楽しみにしておるぞ。ああ、もう眠いわ。妃よ、休もう。」

扉が開かれ、紂王が退室して行く。

「姐己とか言ったな。何を企んでいるんだ!」

太公望が叫ぶと、姐己の背後に化け物ギツネが浮かび上がるのが見えた。

「何も知らずに死んだ方が幸せだと思いますわ・・・・・・。」

威圧的な態度でそう言い残すと、姐己も退室して行ってしまった。

扉が閉められると、胡喜媚が兵達に命令を発した。

「この者を地下牢へ。処置は追って沙汰する。」

兵達は素早く命令を聞き届けると、太公望を地下牢へと連れて行った。

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封神演義