出逢い

朝歌城 地下牢

兵士達が太公望を地下牢へと放り込む。

床に転がる太公望。

「おとなしくしてろよ。まあ、どうせ長い命じゃないだろうけどな。」

牢の入口が閉められ、兵士達が階段を登って行くと、ようやく太公望は起きあがった。

「・・・・・・ううっ。」

「若いの、何をやらかしたんだ?」

突然の声に驚いた太公望は、起ち上がった。

見ると、牢の中には先客がいた。

「ん、あなたは?」

「わしか?わしは、陛下にたて突いたとしてここに送られた反逆者よ。」

「それではあなたが近衛将軍の・・・・・・。」

先客も立ち上がる。

「ああ、黄飛虎と申す。お主は?」

「僕は崑崙山の道士です。師匠の命で、朝歌を覆う妖雲を調べにきたのですが、街中で、親衛隊の無法ぶりを見かけ、黙ってられなくて・・・・・・。」

「一人で戦いを挑んで捕まった、という訳か。なかなか威勢がいいな。」

「・・・・・・僕の戦った兵は人間ではありませんでした。」

「それに、あの姐己とかいう妃もただならぬ妖気を発していた・・・・・・。」

「お主も見たのか?あれを・・・・・・。」

「ええ。」

「わしは、見回りをしていて奴に出くわしてな・・・・・・。」

「斬りつけはしたもののとどめは刺せなかった。」

「翌日、呼び出された謁見の間に腕に怪我をした姐己がおってな。」

「わしをここに放り込んだ、という訳だ。」

「あれは仮の姿で本性は化け物ギツネ・・・・・・。」

太公望は納得したように言った。

「本当の姐己は恐らく・・・・・・。あれの父親・・・・・・・蘇護が知ったらさぞかし嘆くことだろうよ。」

「ぐずぐずしていては、化け物の巣窟と化してしまう。何とかしなければ!」

「とは言え・・・・・・ここから出ないことには話にならんぞ。」

その時、1人の女官が牢の前へとやって来た。

「だいぶ、お困りのご様子ですね。」

太公望と黄飛虎は、女官の方へと近付いて行った。

「今開けますからお待ち下さい。」

「えっ。君は?確か、謁見の間にいた・・・・・・。」

「見ての通り、ただの女官ですわ。」

そう言うと、女官は牢の扉を開けた。

「はい、開きました。兵に見つからぬよう気を付けて逃げて下さいね。」

太公望が牢から出て来る。

「それでは・・・・・・と、その前に、これを渡しておかなくてはね。」

女官は武器と防具を差し出した。

「あっ、打神鞭!それに武器や防具まで・・・・・・。どうやってこれを?」

太公望は武器と防具を受け取りながら、不思議に思って尋ねた。

「そこはそれ・・・・・・。色んな手があるものですわ。それでは通用門を開けてきます。」

そう言い残すと、女官は階段を登って行ってしまった。

「あの女官、何故僕達を助けてくれたのだろう?」

「それより、ここを脱出する方が先だ。行こう!」

黄飛虎に促されて、2人は階段を登って行った。

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封神演義