封神榜

勝利を収めた太公望の元へ、白鶴童子が姿を現した。

「ししょー!かっこ良かったよー!」

「白鶴!どうしてこんな所に?」

「元始天尊様のお供で来たの!」

白鶴がそう言うと、天から光の柱が降りて来るのが見えた。

そして光の柱が消え去ると、元始天尊が姿を現したのである。

「あっ、師匠!お久しぶりでございます。」

「ああ、良い良い。堅苦しい挨拶は抜きじゃ。」

慌てて跪こうとする太公望を引き止めるように、元始天尊が声を掛けた。

「それで、師匠。妖雲はどうやら、朝歌に巣食う化け物が原因のようです。」

「うむ・・・・・・。どうやら、わしの嫌な予感は的中していたようじゃな。」

太公望の報告を聴いた元始天尊は考え込むように言った。

「と、おっしゃいますと?」

「お前が見たのは妖魔じゃ。何者かが、闇の封印を解いてしまったのじゃよ・・・・・・。」

元始天尊の言葉を受けて、楊せんが言葉を続けた。

「黎明大戦の時に、我が仙道の先達によって封印された闇の種族・妖魔・・・・・・。奴等がこの人界に再び現れることになろうとは・・・・・・。」

太公望も真剣な表情で言葉を続ける。

「では、あの妖雲は妖魔復活の兆し・・・・・・。」

その途端、元始天尊が激しく咳込んだ。

「うっ!ごほごほごほ!」

心配した白鶴が元始天尊に駆け寄る。

元始天尊様!」

「だ、大丈夫じゃよ。本来なら、わしら仙人が妖魔を退治するべきじゃが・・・・・・。仙界に長く居すぎた身では、妖魔の発する邪気にさらされると、このざまじゃ・・・・・・。」

太公望は元始天尊の前に進み出ると言った。

「師匠!僕に・・・・・・、この僕にやらせて下さい!まだまだ未熟かもしれませんが死力を尽くします!」

「うむ、よく言った!それでこそ、我が弟子じゃ・・・・・・。太公望よ、そちに命ずる。人界に巣食う妖魔と彼等に加担する者達を再び闇へと封じ込めよ!」

太公望は厳粛な面持ちで跪いた。

「はっ!」

「そちにこの封神榜を授ける。神の回廊を通じて永遠の闇に魂を封じる宝貝だ。」

太公望は恭しく封神榜を受け取った。

「勿論、仙界は総力をあげてそちに協力する。人界の危機は、即ち仙界の危機でもあるからの。人界の存亡はそちの働きにかかっている。・・・・・・頼むぞ、太公望。」

そういい残して元始天尊は、光の柱と共に再び、空高く昇って行った。

「ししょー!あたしね、仙界と人界の連絡役になったんだよ!これからは、ちょくちょくししょーに逢いに来るから宜しくねっ!それじゃあ、頑張ってね!まったね〜!」

そう言って白鶴が去って行くと、黄飛虎が口を開いた。

「太公望殿・・・・・・、我々の目的は同じだ。一緒に行かないか?」

「いいんですか?こちらからお願いしようと思っていたところです。」

太公望が驚いたように言うと、楊せんが言葉を続けた。

「私は・・・・・・、一旦朝歌に戻り、奴等の情報を集めます。その後、皆さんに合流しましょう。」

「分かりました。楊せん殿なら大丈夫だと思いますが、くれぐれもお気をつけて・・・・・・。

「ああ、それから・・・私の師匠、玉鼎真人の洞府を尋ねてみて下さい。きっと力になって下さるでしょう。」

「ありがとうございます。」

太公望達に見送られ、楊せんも去って行った。

「それでは、行こう。次にここに来る時は、奴等を倒す時だ!」

黄飛虎が声を掛けた。

「はい!」

こうして元始天尊より重要な命を受けた太公望は、旅立ちの時を迎えたのである。

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封神演義