臨潼関

太公望一行は臨潼関へとやって来ていた。

「あれが臨潼関です。街道の要所に、あのような関門が設けられています。恐らく我々の朝歌脱出は、既に通報されているでしょうな。」

「つまり、敵さんはもう準備万端ってことだな。そいつぁ楽しみだ。」

黄飛虎の声に、なたが満足そうに頷いた。

「あっ!関門から誰か出て来るぞ!」

太公望の言った通り、関門からは1組の男女が出て来ようとしていた。

「敵か?」

なたが尋ねると、太公望は首を横に振った。

「いや、違う・・・・・・。武装はしていない。こっちへ逃げて来るようだ。」

確かに2人はこちらへ向かって逃げて来るようである。

2人の後を追っているのは、兵達であった。

「税も納めず逃げようとは見上げた根性だな、おい!」

「まともに納めたら飢え死にだ!こんな所にいられるか!」

若者が必死で反論する。

「ふっ、何人たりともこの張桂芳からは逃れられんぞ。このわしの叫名術を受けて、倒れない者はおらんのだからな!」

そう言って張桂芳は術を使おうとした。

「やめろ!」

太公望が飛び出して行くと、男女は今がチャンスとばかりに逃げ去って行った。

「何だ貴様、死にたいのか?」

太公望を睨みつけた張桂芳は、黄飛虎の姿に目を止めた。

「ん?そこにいるのは・・・・・・。お尋ね者の黄飛虎!探す手間が省けたわ。奴等を捕らえれば恩賞は思いのままだ、かかれ!」

その声を合図に、兵士達が攻撃を仕掛けてきた。

なた様の初陣だ!わくわくしてくるぜ!」

なたは心から嬉しそうな様子である。

「気絶させてからゆっくり料理してくれるわ!くらえ!叫名術!」

張桂芳の思いもかけない術に、太公望を初めとして皆、次々と倒れていってしまった。

「ばたばたと倒れよる・・・・・・。ブザマよのう。」

張桂芳が満足そうに笑うと、只1人、なただけが平気そうな顔で言った。

「面白え術じゃねえか?あいにく、このオレ様には効かねえようだけどな!」

「な、何っ!そんな馬鹿な!」

驚く張桂芳を尻目に、なたは太公望を復帰丹で回復させた。

「すまない、なた。」

太公望も復帰の術で黄飛虎を回復させた。

黄飛虎も息子の天祥に復帰の術をかけると、敵兵に攻撃を仕掛けた。

「せやっ。」

なたも乾坤圏や火炎槍で攻撃する。

そしてついに、黄天祥の射た矢が張桂芳の心臓を見事に射抜いた。

「こ、こんな結末は・・・・・・。・・・・・・認めぬ、認めぬぞ!う、ぐふっ。」

「闇の封印を破りし者よ、永遠の闇へと還れ・・・・・・。封神!」

太公望は封神榜を天に掲げると光の柱が現れ、やがて消えていった。

「今日はなたのお陰で助かったよ。」

太公望が礼を述べると、なたは照れたように言った。

「けっ、よせって。大したこっちゃねえよ。」

「ねえ、なた。どうして叫名術が効かなかったの?」

黄天祥が疑問を口にした。

「ああ、そりゃな、オレが人間じゃねえからだよ。」

「ええっ!?それ、どういうこと?」

「ああ、話しゃあ長くなるんだが・・・・・・。」

そう言って、なたは自らの過去を語り始めた。

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封神演義