なたの過去

「十年前のあの日・・・・・・、親父はオレを連れてお師匠様を訪ねていた。お師匠様の話の長いこと・・・・・・。退屈したオレは、洞府の中の宝貝にいたずらをしたらしい。」

なたが語り始めた過去とは、驚くべきものであった。

「こら、なた!何をしている!」

李靖が叫んだ時には既に遅く、宝貝は激しく輝き炎に包まれたなたが倒れるところであった。

「わあっ、なた!!」

李靖は息子に駆け寄ると、慌てて抱き起こした。

なた!しっかりしろ、しっかり・・・・・・。ああ、何てことだ!」

その様子を見た師匠の太乙真人は李靖を安心させようと、こう言った。

「李靖、私に任せなさい!まだ間に合う!」

太乙真人は2人の側にやって来ると、なたを抱きかかえた。

「大極に成り代わりて命ず!この者に蓮花の精としての新たなる命を与えよ!」

まばゆい光が体内へと吸い込まれていくと、なたはすっくと立ち上がった。

いや、よく見るとぼんやりと光を放ちながら、宙に浮いていた。

「うまく、いったのか・・・・・・?」

太乙真人はなたをじっと見つめた。

「こ、これは・・・・・・、なた・・・・・・ですか?

李靖が今までとは様子の違うなたを前に、師匠に疑問をぶつける。

「ああ、ちょっと大きくなったが問題なくあの坊やさ。蓮花精の加護によって生まれ変わったこの子には、もはや邪悪な術は効かない。どうだ李靖、この子をここで修行させる気はないか?私がじきじきに鍛え上げてやろう。」

「はあ、はい・・・・・・。それでは、お願い致します。」

「ふふ・・・・・・。我ながらうまくできたな。こいつは先が楽しみだ。」

そうつぶやいて、太乙真人は大好きなおもちゃを手に入れた子どものような笑顔を見せた。

「こうしてオレには、さっきみたいなこけおどしが効かなくなったというわけさ。」

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封神演義