申公豹
太公望一行は再び蟠竜嶺へとやって来ていた。 「文化とやら!今日はお前を必ず倒す!覚悟しろ!」 太公望がかつて敗れた異形の者に向かって叫んだ。 「うほほほ、うほ、うほ。」 「あの人、人間というよりも獣ですね。」 黄天祥が顔をしかめながら言う。 「気を付けろ。あいつはまた偶人変化を使ってくるぞ。」 黄飛虎が叫んだ。 何度か偶人変化を受けた3人はお互いの回復に努めるが、それも追いつかないほど敵の偶人変化の威力は強力だった。 「まずいな。例のあれを使うか。」 「封印符ですね。」 黄飛虎が文化に封印符を向けると、封印符は光を発した。 「これで本当に偶人変化を封じることができたのでしょうか?」 黄天祥が自らの傷を回復しながら言った。 「元始天尊様からお預かりしたお札だから間違いはないだろう。」 「うほ。」 文化はまた偶人変化を使ったが、その身には全く変化が訪れなかった。 「ぐふるる?」 不思議そうに首をかしげる文化。 しかし何度試してみても、文化の姿が変化することはなかった。 「今のうちだ。」 3人は次々と攻撃を仕掛けていった。 「闇の封印を破りし者よ、永遠の闇へと還れ・・・・・・封神!」 「やったな。」 「は洞府送りになったけど、何とか勝てたな・・・・・・。」 そう言って太公望がほっと一息つくと、何者かの声が聞こえた。 「こんな危なっかしい勝ち方では、先が思いやられますねえ。」 3人が声のした方を振り向くと、天から光の柱が降りてきて1人の男が姿を現した。 「あなたは・・・・・・どなたですか?」 「ん?!僕を知らないの?こりゃ驚いた。僕を知らない者が崑崙道士にいるとはねえ・・・・・・。申公豹という名に聞き覚えは?」 「いえ・・・・・・ありません。申し訳ありませんが・・・・・・。」 「・・・・・・むむう。ポッと出の新米道士とはいえ、無知にもほどがある。全く、失礼極まりないがとりあえず許してさしあげよう。僕は寛大だからねえ。君のような素人がどこまで妖魔に太刀打ちできるか、楽しみだよ。」 そう言って申公豹は3人に背を向けた。 「それじゃあ、また。はーはっはっは。」 そして申公豹は来た時と同様、あっという間に光の柱と共に天へと昇って行ってしまった。 「あの人、結局何が言いたかったんだろう・・・・・・。」 太公望が首をかしげていると、白鶴童子がやって来て言った。 「ねえねえ。今、申公豹様が来なかった?」 「何か、言いたいことだけ言って行っちゃったけど・・・・・・。知ってるのか?」 「うん。崑崙山では一、二を争う道士なんだけど・・・・・・。性格が目茶目茶でねえ。好き勝手に人界に降りては、騒ぎを起こすのが大好きなの。ししょーの邪魔をしたりはしないと思うけど・・・・・・。あんまり相手にしないでね。」 「ああ、そうするよ。」 「それじゃあ、あたし帰るね。まったね〜!ししょー!」 そう言い残して、白鶴童子は去って行った。 |
◆封神演義◆