倦土重来〜鎮守の沼にも蛇は住む〜 第3話

「うわっ。」
「きゃっ。」
廊下を曲がった時だった。
反対側を歩いていた人物と一真君が衝突し、すぐ後ろを走っていた私も、一真君の背中に思い切り鼻をぶつけてしまった。
「いったーい!」
「おい、大丈夫か?悪かった。」
一真君がぶつかった相手に右手を差し出す。
「ああ、大丈夫です。」
そう言って立ち上がった人物を見た私はびっくりして叫んでしまった。
「北条先輩!ご、ごめんなさい!」
私は深々と頭を下げた。
「上杉君と宮森さんの方こそ、大丈夫ですか?」
「俺達は大丈夫だ。な、あかね?」
「は、はい。本当にすみません。」
悪いのは私達の方なのに、こんな時まで他人を気遣ってくれるなんて・・・。

北条泉先輩は、私の所属する吹奏楽部の部長で、一真君と同じく2年生。
いつも穏やかで、笑顔を絶やさない優しい先輩なの。
先輩の演奏するフルートの音色に憧れて、私と蘭は吹奏楽部に入ったのよね。
私はピッコロを、蘭はクラリネットをやっているの。

「廊下を走るのは危ないですから、気をつけて下さいね。」
「は、はい。それでは・・・。」
あっちゃー、やっちゃったよ。
よりによって先輩に衝突しちゃうなんて・・・。
もう会わせる顔がないよー。
でも部活で顔を会わせることになっちゃうんだよね。

「あかねー、一真くーん。」
蘭がようやく追いついて来た。
「もう、朝っぱらからいい加減にしてよねー。」
「・・・・・・。」
「あかね?どうしたの?顔が赤いよ。」
蘭が不思議そうに私の顔を見つめる。
「・・・えっ?何でもない。何でもないよー。じゃあまた後でねー。」
そう言って私はさっさと教室へ入ってしまった。
「変なあかね。じゃあ、一真君もまた後でね。」
「おお。」

3人目登場。
しかし本当に日常的ですね。
何の展開もないです。(笑)

24


倦土重来〜鎮守の沼にも蛇は住む〜へ