2


波打ち際に立っている2つの影がある。

どうやら少年と少女のようだ。

気の強そうな少女の声が聞こえる。

「ふーん、そうなんだ?じゃあ、どうしても教えられないって言うのねっ!?」

詰め寄るような少女の声に、少年が答える。

「うん。マリベルには教えられないよ。」

「だったらもう聞かないわ!でもあたしは諦めないよ。あんた達が何をしようとしてるか、いつかきっと暴いてみせるからっ。」

ふとマリベルと呼ばれた少女が何かを思い出したように叫んだ。

「あっ、いけない!明日は年に一度のアミット漁の日だったわ!じゃあね、アルス。また明日ねっ!」

マリベルが家へと帰って行く。

アルスと呼ばれた少年も家へ帰りかけたが、戻るにはまだ少し早いようだ。

アルスは辺りを散策してから家へ戻ることにした。

アルスの住んでいるフィッシュベルの村の近くには洞窟がある。

まだ時間が早いとはいえ、夜なので既に中は真っ暗である。

村に戻ると猫が擦り寄ってきた。

「にゃんにゃ〜ん!」

別の猫もやって来る。

「にゃーん・・・・・・。」

「よしよし、またなっ。」

アルスは駆け出すと教会の方へと向かった。

アルスは神父からまだ見ぬ海の向こうの話を聞くのが好きだった。

「おや、アルスじゃないか。ふむ・・・・・・。さてはまた海の向こうの話かな?」

「うん。聞かせて!」

「確かにわしも若い頃は海の向こうに何があるのか?もしや別の国や村があるのでは?などとよく考えたものじゃ。それで、船をしつらえて海に出たこともあったのう。しかし、行けども行けども海ばかり。島も村もなーんにもありゃせん。やはりこの世界にはこの島だけ。この村と城とそれだけなんじゃよ。淋しい気もするがの。この島が世界の全てなんじゃ。分かったの?」

「ううん、僕は絶対に別の世界があるって信じてる。いつかこの目で確かめるんだ。」

そう答えるアルスの表情は、期待に満ちていた。

「まあ良い。アルスもそのうち分かるときが来るじゃろう。さあ、もう家へお戻り。明日は年に一度のアミット漁の日。早起きしないと、漁の船が出てしまうぞ。」

「うん。じゃあまた!神父さん。」

そう言ってアルスは自分の家へと向かった。

BackNext


Back