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波打ち際に立っている2つの影がある。 どうやら少年と少女のようだ。 気の強そうな少女の声が聞こえる。 「ふーん、そうなんだ?じゃあ、どうしても教えられないって言うのねっ!?」 詰め寄るような少女の声に、少年が答える。 「うん。マリベルには教えられないよ。」 「だったらもう聞かないわ!でもあたしは諦めないよ。あんた達が何をしようとしてるか、いつかきっと暴いてみせるからっ。」 ふとマリベルと呼ばれた少女が何かを思い出したように叫んだ。 「あっ、いけない!明日は年に一度のアミット漁の日だったわ!じゃあね、アルス。また明日ねっ!」 マリベルが家へと帰って行く。 アルスと呼ばれた少年も家へ帰りかけたが、戻るにはまだ少し早いようだ。 アルスは辺りを散策してから家へ戻ることにした。 アルスの住んでいるフィッシュベルの村の近くには洞窟がある。 まだ時間が早いとはいえ、夜なので既に中は真っ暗である。 村に戻ると猫が擦り寄ってきた。 「にゃんにゃ〜ん!」 別の猫もやって来る。 「にゃーん・・・・・・。」 「よしよし、またなっ。」 アルスは駆け出すと教会の方へと向かった。 アルスは神父からまだ見ぬ海の向こうの話を聞くのが好きだった。 「おや、アルスじゃないか。ふむ・・・・・・。さてはまた海の向こうの話かな?」 「うん。聞かせて!」 「確かにわしも若い頃は海の向こうに何があるのか?もしや別の国や村があるのでは?などとよく考えたものじゃ。それで、船をしつらえて海に出たこともあったのう。しかし、行けども行けども海ばかり。島も村もなーんにもありゃせん。やはりこの世界にはこの島だけ。この村と城とそれだけなんじゃよ。淋しい気もするがの。この島が世界の全てなんじゃ。分かったの?」 「ううん、僕は絶対に別の世界があるって信じてる。いつかこの目で確かめるんだ。」 そう答えるアルスの表情は、期待に満ちていた。 「まあ良い。アルスもそのうち分かるときが来るじゃろう。さあ、もう家へお戻り。明日は年に一度のアミット漁の日。早起きしないと、漁の船が出てしまうぞ。」 「うん。じゃあまた!神父さん。」 そう言ってアルスは自分の家へと向かった。 |