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「アルス!そろそろ起きなさい!もうとっくに夜は明けてるよ!」 一向に起きてこないアルスにしびれをきらしたマーレが、階段を上がって来ながら叫んだ。 「そらそら!今日は年に一度のアミット漁の日でしょ。父さんはもうとっくにアミットさんの港へ出掛けて行ったよ。アルスも早く起きて支度しなさい!」 「う〜ん、母さん、おはよう。」 アルスが目を覚ましたのを見届けると、マーレは階下へと降りて行った。 アルスはベッドから飛び降りると急いで支度をして降りて行った。 「支度はできたかい?猟師の息子が寝坊したんじゃ話にならないからね。早くアミットさんの港へ行って父さんを手伝っておやり。」 「はーい。行ってきまーす。」 「あ、ちょっとお待ち。」 慌てて出て行こうとするアルスを、マーレの声が引き止めた。 「父さんにこれを届けてやっておくれ。父さんの好きなアンチョビサンドを作っておいたからね。教会の先のアミットさんの港までちゃんと届けるんだよ。さあ、行っといで!」 アルスは母親の手からアンチョビサンドを受け取ると、教会へと向かった。 「毎年アミット漁の日になると、神に仕えるこの私までがウキウキしてしまいますわ。漁に出る皆さんに神のご加護がありますように。」 シスターが微笑みながら言った。 神父はアルスの姿を見ると嬉しそうに声を掛けてきた。 「おお、アルスじゃないか。今日は父さんの手伝いだな。しかし早いものじゃのう・・・。お前ももう16才。こんなに元気に育って・・・。マーレがお前を産んだ時のあの騒ぎが昨日のようじゃ。おや、そろそろ船の出発の時間ではないのか?アルスよ。港で父さんが待っているんだろう?早く行ってあげるといい。」 「まだ大丈夫だよ、神父さん。」 「そうか。でも早目に行った方がいいぞ。」 「じゃあね、神父さん。」 アルスは裏の家の老人の元へと向かった。 「おや、アルスじゃないか。今日はボルカノ父さんの手伝いをするんだろ?」 「うん。」 「うちの息子もやっとアミット漁の舵取りをさせてもらえることになってね。これもこの村一番の漁師、ボルカノさんのお陰じゃよ。今年もまた珍しい魚がたっぷり食べられるのう。ありがたや、ありがたや。」 「きっと父さん達がおいしい魚を沢山捕ってきてくれるからね。」 「おお、おお。楽しみじゃのう。」 「じゃあまたね。」 アルスは、小さな時からよく面倒をみてくれていたサーラを呼びに行くことにした。 村の案内役もしているサーラはアルスのことを客と勘違いしたのか、少し離れた所にいるアルスに声を掛けてきた。 「ここはフィッシュベル。海に囲まれた小さな村よ。」 「サーラ、僕だよ、アルスだよ。」 「あら、アルスじゃない。どうしたの?今日はアミット漁の日なのに。もうみんなアミットさんの港に集まってる頃よ。何しろ年に一度のお祭りだもんね。」 「サーラは行かないの?」 「観光客が来るといけないから、もう少しここにいるわ。私は村の案内役も兼ねているから。」 「分かったよ。じゃあまた後でね。」 「じゃあね、アルス。」 (さてと、そろそろ港へ行かないと駄目かな?) アルスは港の方へと向かった。 |