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アルスとマリベルは、ようやくグランエスタードの城下町へと辿り着いた。

「やっと着いたみたいね!じゃああたしはここで。」

マリベルはそう言って、さっさと自分の好きな所へ向かうつもりである。

「ちょっと待って。帰りはどうする?」

「え?帰り?う〜んと・・・、そうね。いいわ。帰りは帰りで何とかなると思うから。じゃあね、アルス、ありがとね。」

そう言うとマリベルはさっさとどこかへ行ってしまった。

(まあいいか、帰りは1人の方が楽だしな。)

ほっと一息ついたアルスに、1人の女性が話し掛けてきた。

「ようこそ。ここはグランエスタードの城下町よ。あらあら。ガールフレンドに置いてゆかれちゃったみたいね。」

先程の2人の様子を見ていたようである。

「えっ?違いますよ!ガールフレンドなんかじゃありません。勝手に後をついて来たんです。」

「え?ガールフレンドじゃないの?勝手について来たの?そう、そうなの・・・・・・。だったらあの娘、ああ見えても実はあなたに気があるのかも。」

「え?まさか・・・。彼女とは喧嘩友達です。」

「本当はとってもテレ屋さんなのかも知れなくてよ。」

「そんなことないです。」

「まあ。うふふ・・・。」

意味ありげに笑う女性からさっさと逃れると、アルスは噴水の方へと向かった。

「いや〜、いい天気だなあ。こんな日はとくに平和を実感しますね。」

1人の男性の言葉にアルスが空を見上げると、上空は見事に晴れ渡っていた。

「そうですね。」

「いやはや、この前掃除してましたらな・・・。剣だの盾だの一杯出てきたんですよ。一体いつの時代の物なのか?この平和な国にも昔は争いがあったんですかねえ。」

そう言う男性がいたが、争いの時代のことなどアルスには想像もつかなかった。

穏やかな気候に恵まれたこの島は、人々の心もまた穏やかであった。

時々小さないざこざは見られたものの、お互いに憎しみ合う気持ちなど、皆は持ち合わせていなかった。

しばしそんなことを考えていると、老人が話し掛けてきた。

「さっき綺麗な娘さんが、そこのよろず屋に入って行ったぞい。あれが噂に聞くオルカの彼女かのう・・・・・・。オルカも隅に置けんわい。」

オルカはここ、グランエスタードのよろず屋の息子である。

何かというとアルスに突っかかってくる少年で、アルスは彼を苦手としていた。

(でもいつの間に彼女ができたんだろう?)

城下町だけあって、にんげんの数もフィッシュベルとは比べ物にならないほど多く、人々の噂話のネタもつきなかった。

特に注目を集めているのが、アルスの親友でもある王子、キーファの話題であった。

「大きな声では言えませんが、キーファ王子は困ったお人です。そろそろ次の国王様としての自覚が出てきてもよろしいお年頃。それなのに、お城を抜け出してばかり。お父上のバーンズ国王はどれほど頭を悩ませていることでしょう・・・・・・。」

シスターの言葉に、アルスは良心が痛む思いであった。

というのも、いつもキーファ王子に誘われて、アルスは冒険と称した探索に出掛けていたからである。

そんなアルスを励ますように、アルスに懐いている犬が駆け寄って来た。

「わんっ、わんわん!」

「よしよし!今日も元気だな。」

アルスが犬の頭を撫でていると、井戸の側で立ち話をしている老婆が話し掛けてきた。

「この国には困ったことが2つある。町外れに住むホンダラとそれからお城のキーファ王子じゃ。何とかならんものかのう・・・・・・。」

老婆と話をしていた女性もアルスを見ると、話し掛けてきた。

「おや、誰かと思えば確か、フィッシュベルに住むボルカノさん所の・・・・・・。ボルカノさんは立派なのに、その弟のホンダラときたら・・・・・・。と、甥っ子のアルスにこんなこと言っても仕方なかったわねえ。」

アルスにとっても頭の痛い、実の叔父、ホンダラの噂話も毎日のようにアルスの耳に入ってきていた。

1人の少年が大きな声で泣いている。

「うえ〜ん!ホンダラさんに僕のキャンディ取られたよーっ。」

これにはさすがにアルスも逃げ出したくなってしまった。

(全く・・・子どもじゃないんだから・・・。)

急ぎ足でその場を離れると、アルスは宿屋へ足を向けた。

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