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「やあ、アルス、待ってたよ!」

港へとやって来ると、アルスはトマスに話し掛けられた。

「キーファ王子からの伝言だ。”いつもの場所で待ってる”、こう言えば分かるはずだって。オレは確かに伝えたからな。」

しかしアルスがなかなかその場を立ち去らなかったので、疑問に思ったのかトマスはこう尋ねてきた。

「ん?何だよ。お前もしかして”いつもの場所”がどこだか分からないとか?」

「ううん。そんなことないよ。」

「だったらいいけどさ。」

「ねえ、トマス。」

アルスが尚も自分に話し掛けようとするので、早くその場を立ち去りたかったトマスもイライラしてきたらしい。

「うるせいなあ、もう!やっぱり”いつもの場所”が分からないんだろ?お前いつも、王子とつるんで北の山の方に行ってたよな。いつもの場所ってのは、その辺りじゃねぇのか。」

「ち、違うよ。じゃあね、トマス。」

アルスは急にそう言って走り去ってしまった。

「何だろう?変なアルス。ま、いつものことか。」

アルスは”いつもの場所”へと向かう前に、アミットの家を訪れた。

アミットの家とは、即ちマリベルの家のことである。

マリベルの母親は困ったような顔で言った。

「マリベルったら、また城下町に行って来たみたいね。ホント、あの娘は賑やかな所が好きなんだから・・・・・・。困ったものだわ。」

2階へ向かおうとしたアルスは驚くべき光景に出会ってしまった。

「わったしはメイドっ、メイドっ、わったしはかっわいいメっイドさんっ・・・・・・。」

そう歌いながら掃除をしているメイドの姿を見てしまったのである。

「あっ・・・・・・これはアルスさん。マリベルお嬢様なら、お戻りになられてますだよ。」

メイドは悪びれた様子もなく、普段通りにアルスに挨拶をしてきた。

「あっ、こんにちは・・・。」

アルスは冷や汗を流しながらも、2階のマリベルの部屋へと向かった。

「フーッ!!」

飼い猫が毛を逆立てながら、アルスを出迎えた。

マリベルもアルスに気付いて声を掛けてきた。

「あらアルス。あたしがちゃんと帰れたか、心配して来てくれたのかしら?でもご心配なく。オルカのヤツが頼みもしないのに、家まで送ってくれたから。それよりさっきまた、キーファ王子がこの辺りをウロウロしてたわよ。あんた達また、何か企んでいるんじゃないの。いっつも2人でこそこそ出歩いて、ホント怪しいんだからっ。でもいいこと?あたしの目はごまかせないわよ。フフン。」

そう言ってマリベルはニヤリと笑みを浮かべた。

そうなのだ。

マリベルはいつの間にか、秘密をかぎつけてしまうのである。

アルスはマリベルに別れを告げると、辺りに気を付けながらそうっと目的地へと向かったのだった。

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