1235年 ギュスターヴ15才 木に登ったギュスターヴが枝に腰掛けていると、フリンがやって来た。 「ギュス様!!」 フリンがそう呼び掛けると、ギュスターヴは枝から飛び降りた。 「行くぞ!フリン!!」 そう言うと彼は、フリンをかすめて走り去って行った。 フリンがその場でぐるぐると回転してしまうほどの勢いである。 「待ってよ、ギュス様!!」 フリンは慌ててギュスターヴの後を追いかけて行った。 老婆と女性が広場で話をしている所へ、ケルヴィンがやって来た。 「これはケルヴィン様、この村に何か御用でしょうか?」 女性が尋ねると、ケルヴィンはこう答えた。 「東の洞窟に夜盗らしき連中がいるのを見たと報告が入った。明日の朝、城から兵を出して調べる。今日は洞窟に近付かないよう、皆にも伝えてくれ。」 「はい、良く分かりました。ご苦労様です。」 「では、次の村へ急ぐので、これで。」 そう言ってケルヴィンが立ち去ろうとすると、女性が呼び止めた。 「ああ、お待ち下さい。そういえば、先程ギュスターヴ様が洞窟の方へ行かれたように思いますが・・・・・・。」 「そうか、分かった。ギュスターヴのことは私に任せてくれ。」 女性を安心させるようにそう言うとケルヴィンはその場を立ち去ったが、内心では苛立ちを隠せなかった。 「またギュスターヴの奴か・・・・・・。」 仕方のない奴だと思いながらも、彼は洞窟へと向かった。 その頃ギュスターヴは、ヤーデの洞窟付近へとやって来ていた。 「フリン!早く来い!!」 ギュスターヴがフリンを急かすように言った。 「ギュス様、僕恐いよ。ここ、モンスターいるよね。」 「だから来たのさ。大分練習は積んだからな。今度は実践だ。」 「ここで待ってていい?」 「バカ!付いて来い。」 ギュスターヴには逆らえないフリンは、仕方なしに洞窟へと足を踏み入れて行った。 洞窟の奥へと入って行くと、モンスターが何かを守っているのに出くわした。 「シーバニーか。軽いな。」 そう言うとギュスターヴはシーバニー2匹をさっさと倒してしまった。 シーバニーが守っていたのは灯の槍だった。 「もらっておくか。」 ギュスターヴは灯の槍を手に取った。 2人は更に別の入り口から奥の方へと進んで行った。 一方ケルヴィンの方も、洞窟へと足を踏み入れていた。 しかし中へ入った途端、上から何かが落ちて来た。 それはディノリーチ2匹だった。 「ギュスターヴの奴・・・。」 ケルヴィンは舌打ちした。 「呼んだか。」 そう言って現れたのは当のギュスターヴである。 戦闘に加わったギュスターヴと共に、ケルヴィンはディノリーチを倒した。 「ケルヴィンか、ここで何をしてる?」 「何をしてる?だと!お前を探しに来てやったんだ。ここに夜盗が入り込んだらしいんでな。」 「そうか、奴等夜盗か。」 「会ったのか?」 「フリンが捕まった。」 「あいつも連れて来てたのか!で、フリンが捕まったのにお前は逃げて来たのか?全く仕様が無い奴だな。父上に知らせに行くぞ。」 そう言って引き返そうとしたケルヴィンを、ギュスターヴが引きとめた。 「待て!フリンは俺が助ける。あいつは俺の仲間だ。トマス卿の力は借りたくない。」 「何を言ってるんだ。お前の力で助け出せると思っているのか?」 「俺は奴等の懐に飛び込むから、後ろから術で援護してくれ。」 「何でお前の手助けをしなければならないんだ。」 「助けるのは俺じゃない、フリンだ。頼む、ケルヴィン。」 ギュスターヴにしては珍しく、真剣な眼差しでそう訴えた。 「ふー、全くお前の言うことはいつも無茶苦茶だ。しかし、頼まれたからには応えてやるのが貴族の務めだ。フリンを助けよう。だが、ギュスターヴ、その武器で大丈夫なのか?」 「術の使えない俺にとっては、この鋭い刃だけが頼りなのさ。行こう。」 奥へと進んで行くと、スライムが何かを守っていた。 倒すと、スライムは狩人の弓を持っていた。 ギュスターヴはこれももらっておくことにした。 更に奥へと進んで行った彼らは、夜盗の姿を見つけ隠れた。 夜盗達が話している声が聞こえる。 「全く、キノコ臭い洞窟だぜ。」 「くしゃみが止まんないよ。俺もスカウト組の方が良かったなー。」 「いいのを見つけてくるかな、みんな。」 「当たり前だよ。獲物が獲物がこんなさえないガキ1人じゃシャレにもなりゃしないよ!」 紅一点の女盗が叱り付けるように言った。 「お、おっしゃる通りで。」 部下らしき夜盗が縮こまるようにして言う。 その様子を見たギュスターヴは、縛られてもがいているフリンを助けるために出て行った。 「何だい?あの小僧は?」 「おい、俺達の獲物をどうしようって気だ?」 ギュスターヴはすらりと剣を抜いた。 「何だそりゃ?鉄の剣か?!」 「そんなもんで、俺達とやろうってのか?」 「面白えじゃねえか。俺に任せろ。」 その声を合図に、戦闘が開始された。 素早い動きで二段突きを仕掛けるギュスターヴ。 「いててて。」 「何やられてんだよ!」 「ムキになってまあ、子供だね。あんたら、気を抜くんじゃないよ!」 夜盗が本気になった。 「4対1じゃ終わりだな、ガキんちょ!」 ケルヴィンが走って来ると、叫んだ。 「盗賊共め、ここをヤーデ伯の領地と知ってやって来たのか!父に成り代わって、退治してやる!」 「ケルヴィン!!」 フリンが嬉しそうに言った。 「おやおや、元気なのが来たね。まさか、ヤーデ伯のご子息様かい?やい、殺すんじゃないよ。身代金を頂けるよ。」 「合点承知で!!」 本格的な戦闘が始まったが、夜盗はギュスターヴ達の敵ではなかった。 「あー、もう役に立たないねえ。」 次々と倒されていく部下を見て、遂に女盗自ら襲い掛かって来た。 しかし女盗さえもギュスターヴには敵わなかった。 「何よ、このガキは!!術が使えない、術も通じないなんて・・・・・・。」 「お、お頭!!術の使えない小僧に用はありませんぜ、引き上げましょう。」 そういい残して夜盗達は引き上げて行った。 「フリン、大丈夫か?」 ケルヴィンがフリンに声を掛けた。 「うん。ありがとうケルヴィン。ありがとう、ギュス様。」 「お前がドジだから、こんな面倒なことになったんだぞ!」 ギュスターヴが唇を尖らせながら言った。 「そう言うなよ、奴等、術の素質のある子供をさらっていく盗賊だったんだな。お前達二人じゃ、全然当て外れだったわけだ。」 「当て外れで悪かったな!帰るぞ、フリン。」 そう言ってギュスターヴは去って行った。 「待ってよ、ギュス様!!」 フリンが一生懸命にギュスターヴの後を追いかけて行く。 「ヒネクレ者め!」 後に残されたケルヴィンが呟いた。 |
2005年7月29日更新