Shining Force III ◆ 3
「どうだな・・・シンビオス・・・。父コムラードの代理役は慣れたかな?」 ベネトレイムは穏やかに1人の少年に語りかけた。 しかし、フラガルドの領主の若き息子、シンビオスはいささか緊張した様子であった。 「ふふ、その様子ではまだのようだな。」 ベネトレイムはそう言って微笑んだ。 「コムラード殿・・・体調のためとは言え、この重要な会議に出席頂けぬとは残念だ。こんな時こそ、彼に来て欲しかった。」 「シンビオスを選んだことに不服かね。バリアント将軍の方が良かった・・・そう言いたいのかな、ティラニィ?」 ベネトレイムがティラニィに尋ねると、ブライバブルが助け舟を出すように言った。 「バリアントが会議に出たがっていて、それを気にしてるんだろ、ティラニィ。だが彼は会議には出せんよ・・・。」 「バリアントは血の気が多すぎるのだ。良い男だが、興奮したら手がつけられぬ。交渉事には向かぬ気性の持ち主だ。」 ベネトレイムがその言葉に相槌を打つ。 その言葉に、エキュアルも頷いた。 「ううむ・・・。」 その言葉ももっともであったため、ティラニィが唸る。 「だいいち、ダンタレスを望んだのは君だ。ダンタレスは武勇に劣らず忠誠に厚い。主人の同行という名目無くして来まい?」 ベネトレイムに続いて、ダンタレスが言葉を発した。 「シンビオス様はまだまだお若いため、確かに経験が必要でしょうが・・・、きっと将来共和国を支えましょう。」 「ありがとう、ダンタレス。」 「面白い話をしていたな、ブライバブル?」 ベネトレイムが話題を本題に戻した。 「うむ・・・ああ、ヤツらのことか。大した話しでは・・・ないのだがな。」 「控えの兵達の駐留地バルサモの町に、おかしな者達がいると聞いたのだよ。」 ティラニィが言葉を続けた。 「ほう、おかしな者達がな・・・。」 「ヤツらとは・・・バリアントが言ってた仮面の異教僧のことでしたか・・・。」 エキュアルが納得したように言う。 「そのような者達が・・・。」 シンビオスも真剣な表情で話を聞いている。 「和平会議の開催前よりバルサモに投宿し、平和祈願を続ける謎の異教僧達がいると、バリアント将軍が言っておられました。」 ダンタレスが報告した。 「仮面の・・・異教僧・・・。」 そう呟くと、ベネトレイムは椅子に腰掛けた。 「この大陸にエルベセム神がありながら、どうして異教がはびこるのでしょう?」 ダンタレスが疑問を口にする。 「民衆にとって理想の生活とは・・・当然、与えられるべき権利なのだよ。得られぬのは政治や宗教が悪いのだ。」 エキュアルの言葉にティラニィが続けて言った。 「勝手なことを・・・吹聴しているらしい。国家再編と絶対秩序を実現するのだそうだ。我々が目先の平和も実現できぬのに・・・。」 「随分気になさっておいでですね。ヤツらに何か心当たりがお有りですか?」 ダンタレスが尋ねると、ベネトレイムが言った。 「その異教徒達・・・本当だろうか。和平の祈願が目的と吹聴しているが、もしも・・・ヤツらの狙いが・・・。」 「別に目的があったとしたら、気をつけなくてはいけませんね。」 シンビオスが言葉を続けた。 「千年王国思想とかの流布が目的だろう?バーランドでは山ほど聞く世紀末思想さ。神の降臨により、平等の国ができるそうだ。」 ティラニィがあきれたように言った。 「ベネトレイムは極端に悲観論者だからな。なあに、おかしな連中には事欠かない。いちいち気にしていては身が保たんよ。」 「もしも・・・その仮面の異教僧達が私が耳にした者達のことであるなら、とても楽観的にはなれぬよ・・・。」 ブライバブルの言葉にも、ベネトレイムは不安が拭い去れないようである。 場の雰囲気を察したティラニィが、話題を変えようと切り出した。 「その話はまた今度するとしよう。我々は帝国との和平を実現するため、サラバンドまでやって来たのだから。」 「さて、今日の帝国との和平会議ですが・・・まだ時間のある間に作戦を・・・。」 エキュアルの言葉にベネトレイムが頷くと、扉をノックする音が響いた。 |