Shining Force III 6


屋敷の外へ出るとシンビオス達は中央区の教会へと向かった。
「エルベセムという絶対神がありながら何故、少数派の信仰も認められるのか?宗教が政治に口を出した時代の反省から、信仰が偏ることの危険を避けるためにとそういう制度ができたことは認めますが。」
神父の言葉は、この町を徘徊している仮面の異教僧達のことを指しているのだろう。
教会では、何人かの人達が祈りを捧げていた。
「はい、お役に立てるように頑張ります。」
「まずはここでみんなの話を聞いてみよう。」
「そうですね。何か情報が得られるかもしれません。」
シンビオスは1人の男性に話を聞いてみた。
「みんなは会議の成功を願ってますけど、戦争は商人にとっての稼ぎ時ですからね。どっちを願うか・・・悩みますよね。」
この男性は商人らしかった。
必ずしも平和を願っている者ばかりではないのだと、シンビオスは複雑な気持ちだった。
「どうかいっそう、商売がうまくいって沢山儲かりますように。」
そう言ってパンパンと手を叩いている者がいた。
「まあ、何ていう罰当たりな・・・。」
グレイスの声が聞こえたのか、男性はこちらを振り返って言った。
「エルベセムは守護の神だって・・・、ええ、ええ、私だって分かってますとも。でもね、全知全能の神様だっていうし、商売繁盛のお願いも聴いてくれますよ。私はそう信じてるんだから。うん。」
「信仰も人それぞれということですね。」
「そうだね。」
ダンタレスの言葉に、シンビオスが頷いた。
「お若い方、神に平和を願うのも良いが、願うだけでは訪れない平和もあります。だからそんな時は平和を勝ち取るため、殿方には戦ってもらわねばなりません。」
女性でさえもこんなことを言っていた。
「でも僕は、会議がうまくいくといいと思っている。例えどんな理由があろうとも、戦っていいはずがないんだ。無関係な人々まで巻き込んでしまうから。」
「大丈夫ですよ、シンビオス様。ベネトレイム様がきっとうまく取り計らって下さいますって。」
マスキュリンの明るい励ましに、シンビオスはわずかに微笑んだ。
「ありがとう、マスキュリン。」
シンビオスは更に、もう1人の女性にも話を聞いてみた。
「サラバンドは貿易の国だから・・・やむを得ない話だとは思いますけれど、商売商売って、金儲けの話ばかりです。国が裕福なのはありがたいですけどね、それだけだなんて・・・寂しいですよ。」
国が豊かになれば幸せになれる。
確かにそうではあるが、そのために大切な何かを失うようなことがあってはいけない、シンビオスは女性の言葉を聞いてそう感じていた。
教会を出ると、中央区には大勢の人々が行き交っていた。
「こちらでは沢山話が聞けそうですね、シンビオス様。」
「そうだね。有益な情報が聞けるといいのだけれど。」
シンビオスは男性に話し掛けた。
「私はベネトレイム代表国王を知ってるが、その昔は智将と言われるほどの名参謀だ。彼が黙ってバーランドを渡す訳がない。きっと何かの策を練ってるに違いない。もしかすると奇襲戦法で都市を乗っ取り、皇帝や王子を人質に交渉したりしてな。」
「ベネトレイム様がそんな卑怯な真似をするわけないじゃない!」
マスキュリンが叫ぶと、男性は途端に謝った。
「すまない、これは言葉のあやだ。私も言い過ぎた。」
「分かればいいけど・・・。」
「あそこの老婆にも話を聞いてみませんか?」
グレイスに促され、老婆にも話を聞いてみることにした。
「帝国軍の若い兵士はやることがないと、朝から酒場に入り浸りになっとってな。本当にぐうたらを絵に描いたようじゃ。もっともそういう兵士に限っては、会議の行方に神経を尖らせてはおらん、気の良い連中ばかりなんじゃがね。」
「そうですか。」
老婆の話で、例え帝国側の人間でも話し合えば分かり合うことができるのではないかという期待を持つことができた。
「道具屋さんの売り物をご覧になった?」
突然女性に話し掛けられた。
「いいえ。」
「行かれたらきっとガッカリですよ。いつもあんなに品揃えがありますのに、今は最低限の商品だけ売られています。これも和平会議の影響でしょうか?」
桟橋の方へ向かうと、サラバンド兵に呼び止められた。
「和平会議終了まで許可のない者は、例え両国の首脳の方であろうともここをお通しする訳には参りません。特にあなたは共和国の方ですよね。ここを一歩出たら帝国領ですから、表に出ようとなさらないことです。」
「安心して下さい。ただ通りかかっただけですから。」
「それなら良いのですが。」
もう1人のサラバンド兵は相方よりもくだけた性格のようで、シンビオス達に話し掛けてきた。
「ヤケを起こしてバルサモにでも行き、パーッと騒いで来ようという気持ちはオレには痛いほど分かるんだよ・・・。だがバーランドを共和国が取り戻すなら、話し合いで解決しようなんて無理な話さ。皇帝でも捕まえ、言うことを聞かせるんだ。」
「結構物騒な考え方の人間が多いようですね。」
「うん。変な争いが起こらなければいいけれど。」
ここ、サラバンドでは皆が会議の行方に神経を尖らせていた。

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