Shining Force III 8


「誰かいるみたいですね。」
「ねえ、シンビオス様、行ってみましょうよ。」
「うん。」
屋上では1人のケンタウロスが洗濯物を干していた。
「オレはけして臆病者ではないけど、人殺しの稼業に飽き飽きしたんだ。こうしてシャツを洗う生活をしてると、こういう生き方もあると思うんだよ。あんたオレのきもちが分かるかい?」
「はい。人は殺し合うべきではないと思っています。僕も争いは嫌いですし。」
シンビオスの答えに彼は頷きながらも、どこか非難じみた表情で言った。
「ふふ、そう言ってくれてありがとよ。しかしあんたはそれが分かるほど、戦闘の経験は積んでいないだろう?」
「はい。実戦に参加したことはありません。」
「あんたがもっと戦いの経験を積んで、もう一度そう言えるか楽しみだよ。今度会う時、答えを聞かせてくれ。」
「分かりました。」
シンビオス達は屋上から降りると、民家で話を聞くことにした。
「さっきのケンタウロス、何だか厭世的な感じがしたわね。」
「きっと何か辛いことがあったんだよ。」
「シンビオス様・・・。」
「何だい?ダンタレス。」
「シンビオス様は、何があっても今のまま真っ直ぐな、素直な気持ちを忘れないで下さいね。」
「どうしたのよ、ダンタレスってば改まって。」
「私がお守りしますから・・・。お願いします。先程の気持ちを忘れないで下さい。」
「分かったよ、ダンタレス。僕だって平和が一番だと思うから。」
そう言ってシンビオスは笑みを浮かべた。

「本棚に本があるわ。」
「これは・・・戦術の本だな。」
「集団戦の賢い戦い方とは?敵の戦意をくじくには、隊長を倒すことだ。戦闘時には隊長の確認を急ぐことである。」
「戦闘が始まったらまず最初に隊長を倒せということよね。」
「そうね。」
「ここは誰もいなかったから別の家に行きましょう、シンビオス様。」

別の民家へと入って行くと、何やら不思議な物が飛び跳ねていた。
「な、何よ、あれ・・・?」
「卵・・・でしょうか?」
「でもシマシマの卵なんて見たことないですよ!」
「それに飛び跳ねる卵なんて・・・。」
「行ってみよう。」
「ちょっ、シンビオス様!やめた方が・・・。」
グレイスの制止の声も気にせずに、シンビオスは卵らしきその物体へと近付いて行ってしまった。
「シンビオス様っておとなしそうな顔して、結構行動力あるわよね。」
マスキュリンが感心したように口を開いた。
「あの・・・。」
「くきっ。」
シンビオスが声を掛けると、その物体は甲高い声を発した。
「くきききききっ。くっきーききっきー。くきーっ。ききっきー。」
「生き物・・・だろうか?」
「そのようですね。初めて見る生き物ですが・・・。あまり関わらない方が良いのでは?」
「でも、危害は加えなさそうだよ。」
「へえー。不思議よね。卵なのにどうやって飛び跳ねているのかしら?」
マスキュリンが卵の周りをグルグルと歩き回りながら観察している。
「さあ、シンビオス様。次は貿易センターへ行きましょう。」
「あそこなら各国の情勢が分かるかもしれませんね。」
「そうだね。」
シンビオス達は貿易センターへと向かった。

「ここはサラバンドの貿易センターです。総督府が関わらない小さな商売について、こちらでお取り引きをお願い致します。」
「バルサモで小さな商売でもと思ったら、あそこで商売なんてとんでもない。会議の行方を見守る兵士の殺気で、いつ戦いが始まるかと思う様な有様です。」
「あなた、バルサモのこと聞きました?仮面の異教僧が町を占拠しているなんて、ちょっと異様な光景ですよね・・・。」
どうも人々の話を聞いてみると、バルサモでは不穏な空気が漂っているようだった。
「こちらの本を見てみましょうか?シンビオス様。」
「うん。えーっと、戦争が起きれば商人のチャンス到来!戦争時には大量の消耗戦が生じるものだ。この特殊需要で、商売は大繁盛間違いなし。商人のための本みたいだね。」
「こっちの棚は・・・と。なーんだ、ガラクタばっかり。」
「あっちの人にも話を聞いてみましょう。」
「この会議が戦争に発展するなんて・・・。そんなことは絶対ないと言って下さいよ。戦争は世界を貧しくするばかりか・・・国内の治安への配慮が疎かになって、盗賊達を活気付けてしまいますからね。」
「そうですね。和平のための会議ですから、戦争に発展することはないと思いますよ。」
実際のところ、いつ戦争に発展するかも分からない危うい状況であったのだが、シンビオスは男性を安心させるようにそう述べた。

「やはり町の人達も不安に思っているようですね。」
「まあ、そうよね。いくらベネトレイム様が平和的解決を望んでおられても、帝国側が実のところどんな結果を望んでいるのかなんて、私達には分からないものね。」
「・・・・・・。」
シンビオスは黙り込んでしまった。
「そうだ!シンビオス様、道具屋へ行ってみましょう。サラバンドには珍しい物が沢山あると聞きます。」
ダンタレスはその場の空気を明るくするように、そう声を掛けた。
「ごめん、ダンタレス。心配を掛けてしまったかな?」
「いいえ、そのようなことは・・・。ただ、この場で考え込んでも仕方がありません。まずはベネトレイム様の命を果たすべく、もっと情報を集めましょう。」
「分かったよ。じゃあ、道具屋へ行こうか。」
「はい。」
一行は道具屋へと向かった。

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