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1隻の輸送機が宇宙を航行していた。

輸送機の機長を務めているのは、リョウト=ヒカワ。

驚いたことに、まだ少年のようであった。

「こちらタウゼントフェスラー9。サイド7宙域到達まであと0100。順調に航行中です。」

何度目かの定時連絡を済ませた後、リョウトはずっと疑問に思っていたことをついに口にした。

「・・・どうしてこんなに定時連絡の回数が多いのかな・・・?やっぱり、僕じゃ頼りないのかな・・・。」

すると側にいるリオが、一見怒っているような強い口調で言った。

「何言ってるの。あなたはこの輸送機の機長なのよ。もっと自信持たなきゃ!」

「う、うん・・・。でも、1年ちょっとの訓練で輸送機のパイロットになれただけでも良かったかも・・・。」

そう言った後でリョウトは黙り込んでしまった。

(でも・・・よく考えてみれば変だな・・・。実家の道場を継ぐのが嫌でマオ・インダストリーに入社したけど・・・たった1年で輸送機とはいえ、正規のパイロットに任命されるなんて・・・。それに、訓練生同然の僕達をいきなり輸送機のパイロットにした理由も分からない。)

そんなリョウトを見かねて、リオが声を掛けた。

「どうしたの?難しい顔で黙り込んで・・・。」

「どうして僕達が今回の仕事に選ばれたのか、考えていたんだ。」

「そうね・・・どうして私達がこんな重要な仕事を・・・。」

(・・・・・・・・・。)

リョウトは再び黙ってしまった。

「でも、積み荷を運び終えたら休暇がもらえるし・・・2人で何処かへ旅行に行かない?」

「それはいい考えだけど・・・。」

「じゃ、私、行き先を考えておくわ。」

「・・・とにかく、まだ仕事中だし・・・気を抜くのは早いよ。今回の積み荷は色々といわく有り気だから。」

「そうね。あなたの言う通りだわ。」

「とりあえず、念のために積み荷の確認をしてくるよ。話をしてたら何か気になってきた。」

リョウトの言葉を聞くと、リオの表情に翳りが見られた。

「私、聞いたの・・・。今回の積み荷の噂を・・・。」

「ああ、バニシング・トルーパーのことだね。」

「形式番号にRがつくパーソナルトルーパーには、謎の技術が組み込まれていて・・・不吉な危険がよく起こるって・・・。」

「R・・・?そういえば、積み荷の形式番号はRTX-010だったね。」

「テクネチウム基地の消滅事件・・・。1号機のブラックホールエンジンの暴走が原因だって聞いたわ・・・。」

するとリョウトは明るい表情で言った。

「そんな噂、いちいち気にしてたらしょうがないよ。じゃあ、格納庫に行ってくるよ。」

「分かったわ・・・。気をつけてね。」

リオの不安をよそに、リョウトは格納庫へ向かってしまった。

(・・・・・・・・・。)

ふと、リオは異変に気付いた。

「?・・・・・・・・・おかしいわ。ミノフスキー粒子が戦闘濃度まで散布されてる・・・?」

その頃、リョウトは格納庫へと到着していた。

「バニシング・トルーパー、ヒュッケバインの2号機か・・・。あの子が言う通り厄介な積み荷だな。しかし、どうして本社はこんな物を僕達だけで輸送するような命令を出したんだろう?新型の人型機動兵器なのに行き先は軍じゃなく、DCの日本支部だし。一体何が目的で・・・。」

しかしリョウトの心配はすぐに別のことへと移った。

「それより・・・父さんや姉さん達に会わなきゃならないことの方が問題だな・・・。」

その時、リョウトはおかしなことに気が付いた。

「あれ?コクピットハッチが開いてる。出港時に確かめたのにな・・・。」

突然、激しい振動と共に、何かが爆発するような音が辺りに響き渡った。

「な、何なの!?どうした、リオ!何があったの!?この振動は爆発だよ!!」

しかし雑音がひどく、通信が届かないらしい。

「ヒュッケバインMK-IIの通信機を使ってみよう。」

リョウトはヒュッケバインMK-IIへと乗り込んだ。

再び激しい振動と共に爆発音が聞こえた。

「何だ?機体がアイドリング状態だ・・・。勝手に機動したのか。それより・・・応答して!何があったの!!」

ノイズがひどかったものの、ようやくリオの声が途切れ途切れに聞こえた。

「・・・モビルスーツが・・・輸送機を・・・・・・・・・・・・脱出して・・・・・・。」

「雑音がひどくて聞き取れないよ!もう一度言ってくれないか!!」

その時、今までにないほどの激しい振動と爆発が起こった。

「うあっ!!直撃!?」

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