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アーガマ内では各モビルスーツの整備が行われていた。 ヒュッケバインMK-IIには強化パーツであるマグネットコーティングが装備された。 思わぬところで予期しない戦闘に巻き込まれ、自分だけが助かったということでリョウトはかなり衝撃を受けていた。 (・・・・・・・・・。・・・僕は・・・あの子を・・・リオを助けられなかった・・・。僕はこれからどうすればいいの・・・?) そんなリョウトにはお構いなしに、周りの人間達は忙しそうに働いていた。 「アーガマ、サイド7のグリ−ンノア2へのコースに乗りました。」 トーレスの報告にヘンケンが答える。 「よし・・・手の空いている者は見張り番に立て。それと、モビルスーツの再出撃準備を急いでくれよ。」 「了解です。」 アストナージ返答を 返す。 (・・・・・・・・・。) 先程から黙って何事か考え込んでいる様子のリョウトを見かねて、ヘンケンが声を掛けてきた。 「どうした、リョウト?」 「すみません。もう一つ聞いていいですか?グリーンノア2へは何が目的で・・・?」 「ティターンズがあのコロニーを軍事基地に改造しているという情報があってな。それを確かめに行く。」 ヘンケンが民間人であるリョウトに対していろいろと話しすぎるのが気になり、クワトロが口を挟んだ。 「艦長、それ以上しゃべるとリョウト君が月に戻れなくなるぞ。」 「ああ、そうだな。すまん、聞かなかったことにしてくれ。」 「わ、分かりました。」 月に戻れなくなってはたまらない。 リョウトは慌てて頷いた。 「それでは艦長、私がリック・ディアスで偵察に出よう。」 「うむ。現状のアーガマの戦力で正面からティターンズに戦いを挑むのは得策ではないしな・・・。」 クワトロが一足先に偵察に出るらしい。 (この人達はこれからティターンズと・・・戦うのか。) そう考えていたリョウトに向かってクワトロが声を掛けた。 「リョウト君。我々は間もなく作戦行動に入る。君はブリッジから降りた方がいい。」 (・・・・・・・・・。) しばし考え込んだリョウトであったが、決心を固めると皆が思いもかけなかった言葉を口にした。 「クワトロ・・・大尉。僕もヒュッケバインで一緒に出撃させて下さい!」 (・・・・・・・・・。) 一瞬驚きのあまり言葉を失ったクワトロであったが、真剣な眼差しでリョウトを見据えると言った。 「この作戦は君が考えている程、用意なものではない。それに我々へ手を貸せば、後戻りが出来なくなるぞ。君は我々とは違い、民間人だということを忘れるな。」 「・・・何かしていないと・・・辛いんです。それに、助けて頂いたご恩もあります!」 「自惚れてもらっては困るな。我々は君の手を借りねばならんほど、戦力的な面で困ってはいない。」 「で、でも!僕は・・・あいつを殺したティターンズを許せません!」 (・・・・・・・・・。) 「・・・本音は仇討ちか。だが、そういう感情はいずれ己の身に災厄を招くぞ。」 (・・・・・・・・・。) ブレックスは黙って2人の会話に耳を傾けている。 リョウトはクワトロに劣らぬ程の気迫で更に言った。 「ぼ、僕にはティターンズと戦う理由があります!それに、ヒュッケバインは特殊な防御装置を持っています。最悪の場合、囮にもなります。」 (・・・・・・・・・。) それでもクワトロには納得がいかないようであったが、リョウトの決意に満ちた表情に心を動かされたのか、側にいたブレックスがついに口を開いた。 「良かろう。大尉、戦力は少しでも多い方がいい。リョウト君を連れて行ってくれ。」 「訓練もろくにしていないリョウト君を、ですか?」 「実戦は既に経験済みだ。それに、私はリョウト君に資質があるかどうか見てみたい。」 「・・・それに、敵の意表を突く為には、ヒュッケバインを出撃させた方がいいかも知れないな。」 ヘンケンもブレックスに同意する。 (リョウト君とヒュッケバインMK-IIをエゥーゴに引き入れろというのか・・・。) 少しの間考え込んだクワトロもついに決意を固めた。 「・・・了解した。私からの合図があり艦砲射撃でグリーンノア2を威嚇してくれ。私達はその隙に脱出する。」 「分かった。」 ヘンケンが答えると、クワトロは素早く行動を開始した。 「行くぞ、リョウト君。」 「は、はい!」 (・・・・・・・・・。) そんな2人の後ろ姿を見ながら、ヘンケンは呟いた。 「ハハ・・・クワトロ大尉は俺を部下のように使ってくれる。」 その呟きを耳にしたブレックスがヘンケンに声を掛けた。 「艦長、知っているかね?赤い彗星と呼ばれた男を・・・。」 「知っています。有名なエースパイロットでしたからね。一年戦争当時、自分はサラミスで指揮を執っていましたが、赤いモビルスーツを見たことがあります。」 「ほう・・・。」 「その時に、赤い彗星の力といったものは感じましたし、今も感じますね。」 「誰にだ?」 「クワトロ=バジーナ大尉にです。」 「だが、ジオンは赤い彗星の力を充分に利用出来なかった。」 「・・・それがザビ家の、そしてジオンの限界だったのでしょう。」 「だが、我々はその力をスペースノイドだけではなく、人類全体の為に使わなければならない。」 「はい。それはクワトロ大尉も承知だということです。」 「ティターンズの台頭を許せば、地球連邦は第二のザビ家となる。今はもう、地球人同士で争っている時代ではないのだ・・・。」 |