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サイド7内のグリーンノア2では、少女のよく通る高い声が辺りに響いていた。

「カミーユ、カミーユったら!」

(・・・・・・・・・。)

呼ばれた相手は、不機嫌そうに黙り込んでいる。

「カミーユ!」

しつこく名前を呼ばれ、ようやく少年が口を開いた。

「言うなよ。カミーユってのが俺だって誰にでも分かってしまうだろ?」

「みんな知ってるわ!本人だけが承知してないんじゃない。ねえ、宇宙港に何の用があるの?」

「連邦軍の戦艦、ホワイトベースがグリーンノア2に入港するんだ。それを見に行くのさ。」

「ホワイトベースってあの・・・。」

「ああ。1年戦争で活躍した第13独立部隊の母艦だよ。俺、前にブライトキャプテンのサインをもらったことがある。」

「待ってよ、カミーユ!そんなに急がないで!」

少女が慌ててカミーユを追いかけていく。

その時、先に行ったカミーユの側を通りかかった軍人らしき男が、馬鹿にしたように言った。

「カミーユ?女の名前なのに・・・何だ、男か。」

それを聴いたカミーユの顔が、怒りのあまり真っ赤に染まった。

「!!」

カミーユの反抗的な目を見下ろすと、男は言った。

「フン、気に障ったか?」

「なめるな!!」

そう言うなり、カミーユは相手の顔に殴りかかった。

「!?」

「こいつ!俺達がティターンズだと知ってちょっかいを出してきたのか!?」

一緒にいた男が叫ぶ。

(この人達はこれからティターンズと・・・戦うのか。)

カミーユは明らかに相手が悪いというように言った。

「カミーユが男の名前で何が悪いんだ!俺は男だよ!!」

「・・・そいつを押さえろ。」

殴られた相手が命令すると、カミーユも負けずに言い返した。

「くっ・・・言っていいことと悪いことがある!男に向かって何だはないだろっ!!」

「そうか・・・そういうことか。」

そこへ1人の女性軍人が割って入る。

「ジェリド中尉!何をする気なの?相手は民間人よ!?」

「エマ中尉は俺の上官か?違うだろ。」

ジェリドはエマそう言うと、再びカミーユの方へと向き直った。

「カミーユとか言ったな・・・。なら、男らしく扱ってやるよ!」

バキッ!!

殴られたカミーユが大きく吹っ飛ぶ。

「ぐうっ・・・!!」

あまりの衝撃に声も出ない。

「連行しろ。後でたっぷりと絞ってやる!」

ジェリドと一緒にいた男が部下に命令した。

「チッ・・・。MK-IIの起動テスト前だってのに・・・。」

今の出来事で不機嫌になったジェリドが吐き捨てた。

「カミーユ!カミーユ!!」

後にはただ1人、少女だけが取り残されていた。

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