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ウエルト上陸

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「・・・・・・オイゲン、ウエルト王国は我々と共に戦ってくれるだろうか?」
リュナンが尋ねた。
「先のバルト戦役でロファール王は消息を断たれ、主力騎士団もそのほとんどが壊滅したと聞きます。いかに帝国の横暴と脅威を訴えたとしても、説得するのは容易なことではありますまい。」
「・・・・・・まずは、この国の内情を把握すべきなのかもしれないな。」
「では、この港で情報を集めましょうか。」
「そうだな、皆で手分けして街の人達の話を聞いてくれ。王宮に向かうのはその後だ。」
「はっ。」
「お任せを、リュナン様。」
「承知しましたぜ。」
ラゼリアの騎士であるクライス、アークス、そしてグラナダ海賊の1人であるガロが答えた。

2人の女性が海岸を必死に走っていた。
「サーシャ様!お急ぎ下さい、このままでは追いつかれてしまいます!」
騎士らしき女性が年下の主人らしき少女に向かって叫んだ。
「はあっ、はぁっ・・・・・・。」
少女はすっかり息が上がっているようである。
「ケイト、もう駄目・・・・・・。これ以上、走れない・・・・・・。」
少女が弱音を吐いた。
「気弱なことをおっしゃらないで下さい!ヴェルジェまであと少しです!今しばらくのご辛抱を!」
「でも・・・・・・足が・・・・・・。ううっ・・・・・・!」
少女はとうとうその場にしゃがみこんでしまった。
「・・・・・・これは・・・・・・!」
少女の足はわずかに脹れ上がっていた。
「足をくじかれていたのですね。これでは歩くことさえ辛いはず・・・・・・。申し訳ありません。もっと早く気付くべきでした・・・・・・。」
「ケイト・・・・・・。」
少女が女騎士にすがるような目を向けると、ケイトは力強い声でサーシャに言った。
「追っ手はここで私が食い止めます。その間にソラの港町までお逃げ下さい。宿にでもお姿を隠して今夜一晩休めば、痛みも治まるはずです。そしてサーシャ様だけでもどうかヴェルジェに・・・・・・!」
「そんな!ケイト一人を残しては行けないわ。」
「私のことならご心配には及びません。私はこれでも王妃様をお守りする近衛騎士。コッダの兵士などに遅れを取るものではありません。」
しかしサーシャは彼女の言葉に納得しなかった。
「ケイトが優れた騎士なのは知っています。でも相手は大勢なのでしょう。一人で戦うなんて無謀すぎます。」
しかしケイトの決意は固かった。
「例え無謀であったとしても、私はサーシャ様をお守りせねばなりません。それが近衛の騎士としての私の役割・・・・・・、いえ、私の誇りなのですから。」
「ケイトは死を覚悟してるのね・・・・・・。駄目!そんなこと、私、絶対に許さない!お願い、ケイト。ソラまで、我慢するから・・・・・・。私、頑張るから・・・・・・。だから、一緒に行きましょう。」
「サーシャ様・・・・・・。」
とても歩ける状態ではないのにサーシャは気丈にも一騎士である自分を気付かってくれている。
ケイトはこの時、必ずサーシャを守ってみせると心に誓っていた。

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