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出発

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民家を訪れたリュナンは、現在の状況を聞いていた。
「本土ではほとんどの国が、帝国の支配下に入ったらしいな。だが帝国も、こんな辺境まで進軍しては来るまいに、我らがロファール陛下はリーヴェの窮地を見かねて挙兵され、バルト要塞での戦いで行方不明となられた。素晴らしい王であったのに・・・・・・その人の良さが災いするとは皮肉な話だな。問題は、陛下亡き後のこの国の行く末だ・・・・・・。残されたリーザ王妃とサーシャ王女の母娘だけでは、この国も長くは保てまい・・・・・・。おっと、長話を聞いてくれたお礼にこの剣を差し上げよう。ありふれた物だがわしが使い込んだ分、切れ味が良いかもしれんぞ。」
「これは、鉄の剣。どうもありがとうございます。」
「なあに、わしにはもう使えないからな。お前さんが使ってくれた方が、剣も喜ぶだろう。」

ガロは訪れた民家で、南にある跳ね橋の情報を聞いていた。
「南の跳ね橋は、潮の満ち引きに合わせて上がり下がりするようになっとるんじゃ。まだ下りてないのならそのうち下りるはずじゃて。ちょいと待ってみてはどうかの?」
どうやら跳ね橋はもうしばらくすれば下りそうだった。

アーキスは武器屋を覗いていた。
「いらっしゃい。ウチは武器の店だよ。短剣460G、細身の槍560G、手斧600G、手弓500G、癒しの杖2200G。うちにある商品はこんなところだけどね。」
「では、癒しの杖をもらおう。」
すると主人は、親切にこうアドバイスしてくれた。
「そいつは、あんた向きの武器じゃないが、いいのかい?」
「ああ。いずれ必要になるだろうからな。」
「他にも何か買ってくれるかい?」
「では、手斧をもらおうか。」
「これもあんた向きじゃないが。」
「いいんだ。使える仲間がいるからな。」
「他に用はあるかい?」
「いや、これだけでいい。」
「ありがとさん。また来てくれよ。」

「ガロ、これを使ってくれ。」
アーキスはたった今買ったばかりの手斧をガロに手渡した。
「ありがたい。」

ガロは次に道具屋を訪れた。
「いらっしゃい。ウチは道具のお店よ。薬草が1200G、革の盾が2000Gね。」
「とりたてて今は必要な物はないな。」
「もう帰っちゃうの?残念、また来てね。」

その後クライスは武器屋で短剣を購入した。
「それでいいかい?」
「はい。それから手弓を頂きます。」
「ありがとさん。」

リュナンは別の民家を訪れていた。
「東のヴェルジェの領主、マーロン伯爵はご高齢ではあるけれど義に厚く、とても民思いでコッダ宰相なんかとは比べ物にならない程、優れたお方だよ。本当はマーロン伯こそ宰相に相応しい方だとみんな思ってるはずさ。なのにどうして王妃様はコッダなんかに宰相を任せて、ヤツの横暴を放っておくんだろうね。所詮、雲の上の人達は、地べたを這いずる民のことなど考えちゃいないってことなのかな・・・・・・。」
そう言ってため息をついた男性は、リュナンにお守りを差し出すと言った。
「・・・・・・ところで、君、このお守りをもらってくれないか。昔の恋人にもらったんだけど今の彼女に見つかること困るし、といって捨てる訳にもいかないし、どうしようかと悩んでたんだ。君がもらってくれるなら嬉しいな。」
「でも、良いのですか?」
「うん。僕としても助かるからね。頼む。」
「分かりました。ありがたく頂きます。」

「リュナン様、跳ね橋が下りたようです。そろそろ出発致しましょう。」
オイゲンの言葉に従い、リュナン達は町の外へと出発した。

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