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宿屋には、ゆっくりとくつろげるようにという願いをこめて、『やすらぎ』という名前が付けられていた。 現在やすらぎには、旅の夫婦が泊まっていた。 「今、主人と旅をしています。ここはいい所ですね。ずっと居たいわ・・・。」 夫人はクレスにそう話してくれた。 「ご主人はお出掛けなんですか?」 「主人なら散歩してますわ。景色が良いものですから。」 そんな会話していると、女将がクレスに向かって声を掛けてきた。 「クレスかい?すまないが、そこにある置物を廊下に運んでくれないかい?」 「あの・・・置物って・・・、あの石像ですか?」 「そうだよ。窓際にぴったりくっつけておくれよ。廊下の真ん中に置いたら、お客さんに迷惑がかかるからね。頼んだよ。」 クレスは置物を言われた通りに運んだ。 「ありがとうよ。ほら、小遣い。」 そう言って女将は10ガルドをクレスに渡してくれた。 「臨時収入だな。雑貨屋のゴーリにでも寄って行くか?」 「そうだね。」 チェスターの提案で、2人は雑貨屋へと足を伸ばすことにした。 店の中に入ると、店員が話し掛けて来た。 「スペクタクルズってのは戦いの時に敵の情報を知ることができる道具なんだ。買っといて損はないと思うよ。」 「何をサボっとる!!もっと気合い入れて働け!」 「は、はい!」 店主は店員を怒鳴りつけると、チェスターに話し掛けてきた。 「おお、チェスター、妹は元気か?」 「はい。お陰様で・・・。」 「そうか。それは良かった。ほら、これを持って行きな。」 店主はりんごを手渡してくれた。 「ありがとうございます。アミィのやつ、喜びますよ。」 「じゃあまた、何かあったらおいで。」 「はい。それでは・・・。」 「じゃあそろそろ、チェスターの家に行こうか。アミィが待ちくたびれているよ、きっと。」 2人はチェスターの家へと向かった。 - 第6話完 - |