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クレスとチェスターは2階へ上がって行った。 「あ、クレス君、お母さんが寝ているから静かにね。」 お手伝いさんに言われ、そっと母親の部屋へと足を踏み入れる。 「ぐっすり寝てる・・・。」 クレスは母親には何も言わずに出掛けることにした。 下へ降りて行くと、1人の剣士がクレスに話し掛けてきた。 「やあ、君がアルベイン先生の息子のクレス君だね?」 「はい。」 「今度、是非お手合わせ願いたいものだな。」 「いえ、俺なんかまだとても・・・。」 「ところで君は、隊列の仕組みについて知っているかい?」 「いいえ、教えて下さい。」 「隊列というのは、戦闘の時の位置のことだ。クレス君は剣士だから、前衛で戦うべきだろう。そしてチェスター君は、後方から弓で、クレス君を援護するんだ。」 「はい。」 「戦いにおいて、敵に突っ込んで行くだけでは優れた剣士とは言えない。防御の基本を身に付けていればこそ、戦いの場でも冷静になれるものだ。私は遂にアルベイン先生に弟子入りしたのだ・・・。先生の元で更に剣の腕を磨くのだ!」 「そうですか。お互いに頑張りましょう。」 「ああ。」 クレス達は剣の稽古をつけている、クレスの父親の元へと向かった。 「父さん、狩りに行ってくるよ。」 「気をつけてな。遅くならないうちに帰るんだぞ。」 父親のミゲールに狩りの出掛けることを告げ外へ向かおうとすると、稽古をしている練習生の1人の素振りがクレスに当たってしまった。 勢いでクレスは転んでしまう。 「クレス、邪魔をするんじゃない!」 「すみません。」 父親に怒鳴られ、慌てて外へ出ようとすると師匠のトリスタンに声を掛けられた。 「クレス、精進しておるか?」 「はい、今から狩りに行くところです。」 「おんしも、父を超える剣士になるんじゃぞ。」 「はい。頑張ります。」 そんな会話をしていると、真面目に訓練をしているはずの見習い達の呟く声が聴こえてくる。 「お腹空いたなぁ〜。」 「俺達、いつまで、こんなこと、してるんだろう?」 勿論こんな見習い達ばかりではなく、一生懸命に訓練している若者達もいるのであるが。 「とうっ!」 「とうっ!」 「えいっ!」 「えいっ!」 若者達の元気な声が響いている。 「あ、クレス君、どこかに行くの?」 家を出ようとすると訓練場の受付の女性に声を掛けられた。 「狩りに行くんだ。大物を捕まえてくるよ。」 「そう。気を付けてね。」 彼女に見送られ、クレス達は家の外へと出て行った。 - 第8話完 - |