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クレスとチェスターは聖レニオス教会へと向かった。

教会には祈りを捧げに来ている者達がいるように見えたが、実際は不謹慎なことを考えている輩もいるようである。

「自然崇拝も結構だけど、行き過ぎると困るぜ・・・。枝を折っちゃかわいそうだとか、教養を取り違える奴がいるんだよな。」

そう言っている人もいれば、こんなことを言っている人もいた。

「教会の祭壇の彫像って色っぽいよな。おっと、女神様なんだっけ。いけねぇいけねぇ・・・。」

クレスの姿を見て、シスターが声を掛けてきた。

「あ、クレス君。今日は何かしら?」

「たまには教会に寄るのもいいかなぁと思って・・・。」

「いい心掛けね。あなたに神の御加護がありますように・・・。」

「おら、クレス君か。何か悩み事かな?」

今度は神父が声を掛けてきた。

「いえ、特に悩みはありません。」

「近いうちにここで結婚式を執り行います。お手伝いを、お願いできますかな?」

「ええ、もちろん。」

「ありがとう。この教会はトーティス村の創始者であるレニオスにちなんで名付けられました。偉大なる創始者の名に恥じぬような、立派な結婚式を挙げたいものです。」

「そうですね。俺もできる限りのことをしますよ。」

「それは頼もしいですね。それではまた・・・。」

教会を出たクレス達は雑貨屋へと向かった。

「何じゃ、クレスか。何か用か?」

「ええ。」

「外はええ天気ぢゃのぅ。しかし、西の空に雲が出てきおった・・・。一雨くるかもしれんのぅ。」

一方的にしゃべりまくる雑貨屋の主人に、クレスは思い切って声を掛けた。

「あの・・・。」

「何じゃクレス、何か入り用かの?」

「スペクタクルズを5個に、アップルグミを1個下さい。」

「はいよ。またおいで。」

次に向かったのは武器屋『ティーゼル』であった。

武器屋には既に先客がいた。

「剣士たる者、いつでも技が出せるように準備しておくことだ。」

ぶつぶつと呟きながら、品揃えを確認している。

「う〜む、さすがに剣の先生のいる村だ・・・。いい武器が揃ってるな。・・・・・・。」

しかししばしの間じっと考え込むと、やがて彼は口を開いた。

「すまん、お世辞だ・・・。」

そう言って客は立ち去って行ってしまった。

「やっぱりな・・・。こんな村じゃ、よそから来た人から見たら大した物は売っていないよなあ。」

チェスターが言った。

「しっ!」

クレスがたしなめる。

「よ、クレス!」

武器屋の主人は先程の客の言葉には気付かなかったようである。

そしてチェスターの言葉にも。

クレスはほっと胸を撫で下ろした。

「よぉクレス、何か買ってくれんのかい?」

「今日はもう手持ちがないので、すみません。」

「そうか、それは残念だな。また来いよ。」

「さてと、そろそろ行くとするか。」

2人が村を出ようとすると、トリスタンが呼ぶ声が聞こえてきた。

「クレスよ〜い。」

「師匠、お帰りですか?」

「実はな、先程、見知らぬ者が来て急に呼び出されたんじゃ。何の用事か告げもせぬ。全く、無作法じゃ。おんしはどこへ行くんじゃ?」

「南の森まで猪狩りに行ってくるんです。」

「そうか、精進せいよ。」

「はい、師匠。」

トリスタンはクレス達に別れを告げると一足先に帰って行った。

「さてと、今度こそ行くとするか。」

チェスターに促され、クレス達は村の外へと出て行った。

- 第9話完 -

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