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「くそっ。急がなきゃいけないのにっ!」

村へと向かう途中、2人の前にバグベア3匹が立ち塞がった。

「たあっ。」

「やあ!」

バグベアを倒した2人は再び先を急いだ。

森から出ると、村が火の海に包まれているのが2人の目に飛び込んできた。

不安にかられながら、これ以上ないくらいの速さで走り続ける。

村へ足を踏み入れると、辺りは予想以上に凄まじい有様だった。

「そ、そんな・・・。」

呆然とするクレス。

「オレ・・・、家を見てくる!アミィ!」

チェスターは自分の家に向かって走って行った。

我に返ったクレスは、村の中を歩き回った。

扉の壊れている雑貨屋ゴーリに入って行くと、主人は既に息絶えていた。

側には子どもも倒れている。

「小さな子供まで・・・。一体誰がこんなひどいことを・・・。」

宿屋やすらぎも同様だった。

(教会はっ・・・。)

僅かばかりの期待を持って教会へ向かったが、やはり皆息絶えていた。

橋の上では、水の中に飛び込もうとしたのであろうか?

やはり息絶えた人々が倒れていた。

クレスを除いて誰一人、動いている者はいなかった。

(父さんと母さんは?)

家へと急ぐと、家の前で誰かが倒れているのが見えた。

「と、父さん・・・。」

父親のミゲールはまだ僅かに息をしていた。

「クレス・・・、母さんは・・・無事か・・・。」

「父さん、何が起きたの!?」

「・・・ぐふっ!」

何かを言おうとしたミゲールは口から血を吐き出し、動かなくなった。

「父さん!!」

その時扉が開いて、家の中から誰かが出て来た。

「!」

クレスが見上げると、それは母親のマリアであった。

「母さん!!」

しかしマリアはその場に倒れてしまった。

「母さん、しっかり!」

クレスが駆け寄ると、マリアは苦しそうな息の下から言葉を発した。

「クレス、逃げなさい。叔父の住む北の都、ユークリッドに・・・。あいつらは、お前のペンダントを・・・。」

「あいつらって誰!?一体誰が・・・こんなことを・・・。」

「父さんは・・・私が人質に取られなければ・・・、ああっ・・・。」

そういい残してマリアは息を引き取った。

「母さん、母さん!」

クレスは母親の体を激しく揺さぶったが、その目は二度と開かれることはなかった。

そして、まるでクレスの心の中をそのまま映し出したかのように、大粒の雨が降り出し、雷鳴が轟いた。

物言わぬ屍がそこにあった。

「目を、開けてよ・・・。母さん!!・・・うわあああああ!!!」

クレスはひたすら号泣していた。

- 第11話完 -

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